2006年度広島確率論・力学系セミナー
4月のセミナー
- 日時:2006年4月11日(火)15:00〜
- 場所:広島大学理学部B棟B701室
- 講演者:高橋 博樹氏(IMPA)
- 題目:Almost every limit behavior in the basin of Henon-like
attractors in critical saddle-node cycles
- アブストラクト:
- 2次元微分同相写像が持つcritical saddle-node cycle
から分岐するHenon的アトラクターの吸引領域における軌道の振舞い
に関して、最近得た結果を報告する
5月のセミナー
- 日時:2006年5月23日(火)15:00〜
- 場所:広島大学理学部B棟B701室
- 講演者:廣川 真男氏 (岡山大自然)
- 題目:Deformation (and/or Formation) of Bipolaron
- アブストラクト:
- 結晶中に2つの電子を考えると、これらの電子はクーロン
斥力が働くが、結晶格子振動を量子化したフォノンを2つ
の電子がやりとりすると、両者の間に引力が生じる。この
物理現象の有名な例は超電導のBCS理論におけるクーパ
ー対であるが、講演では、高温超電導の観点から、ラージ
・ポーラロンというLOフォノンを纏った電子の2体問題
を考える。LOフォノンのやりとりから生じる引力がクー
ロン斥力と釣合う場合、2つのポーラロンは束縛され、バ
イポーラロンを形成する。反対に、引力が弱いとバイポー
ラロンは非形成となる。講演では、この固体物理における
問題を数学に定式化し、バイポーラロンの結合エネルギー
を見積り、バイポーラロン非形成となるための十分条件を
示す。時間に余裕があるようであれば、バイポーラロン形
成についても述べる。
廣川氏は同じ日に数学教室談話会でも講演されます。参考までに
情報を引用しておきます。
- 日時:5月23日(火),13:00 - 14:00 (14:00- Tea Time)
- 場所:大学院理学研究科 B707号室
- 講師:廣川 真男氏 (岡山大自然)
- 題目:非相対論的場の量子論における作用素解析学
- 要旨:
- 近年、非相対論的場の量子論における作用素解析学が盛んに研究され発展してき
た。非相対論的場の量子論は、低エネルギー(従って非相対論的)領域を扱うが、
粒子やスピンが量子場と相互作用した模型を記述するため、量子光学、固体物理
などへの応用を持つ。そこで講演では、作用素解析学のそれらの物理への応用の
紹介と、低エネルギー特有の発散問題である赤外問題について述べる。
6月のセミナー
- 日時:2006年6月6日(火)15:00〜
- 場所:広島大学理学部B棟B701室
- 講演者:矢野 孝次氏 (京都大数理研)
- 題目:コンパクト群上の負時刻確率方程式(赤堀次郎氏,植西千尋氏との共同研究)
- アブストラクト:
- コンパクト群に値をとるある負整数時刻の確率方程式を考え,その強くない解の存在,
解の分布の一意性を論ずる.その鍵となる結果は,解の集合に対する群の対角作用が
推移的であることである.確率方程式の強くない解とは,解がノイズと異なる情報を
含むことを意味し,これは確率方程式に特有の概念である.我々の方程式は,強い解
を持たない確率微分方程式の例の構成のためにTsirelsonが導入したトーラス上の方
程式に由来する.Yorはこの方程式を一般の独立なノイズに対して考えたが,我々の
目標はこれの一般のコンパクト群への拡張である.
7月のセミナー
7月3日の週に高岡浩一郎氏 (一橋大商) が「数理ファイナンス入門」という題目で
集中講義を担当されます。時間割は以下の通りです。
また使用教室はいずれも理学部B棟B707室です。
- 7月3日(月):9,10時限
- 7月5日(水):7,8時限,9,10時限
- 7月6日(木):7,8時限
- 7月7日(金):3,4時限
セミナー講演もご承諾いただきました。
- 日時:2006年7月4日(火)15:00〜
- 場所:広島大学理学部B棟B701室
- 講演者:高岡浩一郎氏 (一橋大商)
- 題目:Black-Scholes モデルの拡張について
- アブストラクト:
- 株式オプションなどのデリバティブの価格計算の際に用いる株価変動
モデルとして,最も有名でありかつ今でも最も良く使われるのは,幾
何 Brown 運動モデル(Black-Scholes モデル)である。このモデルに
おいて,株価変動率の標準偏差(ボラティリティと呼ばれている)が
期間中ずっと定数であるという点が,現実の株価データと合わないと
いう批判がよくなされる.モデルを現実により近付けるために様々な
改良や拡張が行われている.本報告でも1つの拡張モデルを提唱する.
モデルに用いた確率過程の性質を調べ今回のモデルがどのような利点
を持っているかを明らかにする.ヨーロピアンコールオプション価格
の計算や,均衡理論からの特徴づけも述べる.
高岡氏は同じ日に数学教室談話会でも講演されます。参考までに
情報を引用しておきます。
- 日時:7月4日(火),13:00 - 14:00 (14:00- Tea Time)
- 場所:大学院理学研究科 B707号室
- 講師:高岡 浩一郎氏 (一橋大商)
- 題目:数理ファイナンスについての紹介
- 要旨:
- 数理ファイナンスが脚光を浴びている社会的背景の解説から始まり,
デリバティブ(派生証券)とは何か,どのような数学が使われてい
るのか,実務にどう役立っているか,などについて紹介を行います.
10月のセミナー
- 日時:2006年10月10日(火)15:00〜
- 場所:広島大学理学部B棟B701室
- 講演者:河備浩司氏 (九州大数理)
- 題目:Essential self-adjointness of Dirichlet operators on
a path space with Gibbs measures via an SPDE approach
- アブストラクト:
- 無限次元空間上の2階微分作用素であるDirichlet作用素が本質的自己共役で
あるか否か?という問題は,(確率)解析学的視点と物理的視点の両方から
見て非常に重要な問題であり,今までも竹田,Albeverio,Roeckner,重川を
始めとする多くの研究者により論じられてきた.本講演では,(無限体積)
経路空間上のGibbs測度に関する Dirichlet作用素の本質的自己共役性および
その応用(SobolevノルムのMeyer同値性)について論じる.
- 日時:2006年10月17日(火)15:00〜
- 場所:広島大学理学部B棟B701室
- 講演者:磯崎泰樹氏 (大阪大理)
- 題目:A Review on reinforced random walks with
particular emphasis on the Diaconis walks
and "de Finitti's theorem"
- アブストラクト:
- reinforced random walksは粘菌の集合体の
モデル化に使えそうな印象を誰でも持つが、
これまでの数学的な研究では、
出来るだけ一般の枠組みでrecurrence/transience/finite range
の区別をつけることが主に研究されてきた。
しかしreinforced random walksは、極端に多様性に富んで
いるので、決定版といえる定理はまだなく、しかも
二次元以上の格子では未開拓に近く、目を転ずれば、
強いreinforceを行えばもっとrecurrentになるという
直感も正当化されていない。このままの方向性では、
モデル個別の研究になって一般性を失ったり、
言えて当然の主張が証明できなかったりという、
不満足な結果になるであろう。
本講演では、次のような問題提起をしたい。
ある特別なreinforceの仕方をするとき、
Diaconis walkと呼ばれているが、
グラフを木に限り、"de Finitti's theorem"
を応用することにより、RWREと同値になる。
そのときでも、reinforced random walksがモデル化
しているであろう粘菌との類似性は残っている。
この特殊な場合にのみ成り立つRWREとの同値性を
最大限活用して詳細情報を調べ、つまり
positive recurrentな場合であれば
各点ごとの滞在割合を調べたり、
transientであれば帰ってこない確率を調べたりする
ことによって、モデルの定量的な性質を導き出す
のは興味深い。既存の研究は、定量的な側面を
持っていたとしても、主定理はあくまで定性的であった。
11月のセミナー
- 日時:2006年11月21日(火)15:00〜
- 場所:広島大学理学部B棟B701室
- 講演者:鄭 容武氏 (広島大工)
- 題目:力学系の帰還時間と大偏差原理
- アブストラクト:
- 力学系の帰還時間関数から導かれる Markov tower について考える.
帰還までに長い時間がかかる点の集合の測度が
時間の長さに関して速く減少すれば絶対連続不変確率測度が存在し,
よい混合性と中心極限定理を得られることが知られている.
講演では Markov tower上で大偏差原理が成立するための
判定条件について紹介したい.
また,1次元可微分力学系への応用についても述べたい.
1月のセミナー
- 日時:2007年1月9日(火)15:00〜
- 場所:広島大学理学部B棟B701室
- 講演者:石川 保志氏 (愛媛大理工)
- 題目:Malliavin calculus on the Wiener-Poisson space and its
applications to canonical SDE with jumps
(joint work with H. Kunita)
- アブストラクト:
- Wiener-Poisson空間上に勾配作用素(gradient operator)を定義し、ソボレフ空間を作る。
勾配作用素に関する確率変分を行い、部分積分の式を得る。ジャンプ型SDEの解への応用も述べる。
- key words: ジャンプ過程,ポアソン空間,マリアバン解析
last modified on 2006.12.20
質問などの連絡先
iwataの後にmath.sci.hiroshima-u.ac.jpをつけて下さい
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