-
日時:2023年5月16日(火),15:00-16:30
場所:理学部B707号室
講師:吉田 建一 氏 (広島大学)
題目:多面体による双曲錐多様体の構成・変形・退化
双曲錐多様体は、双曲多様体に余次元2の特異集合を許したものである。とくに、3次元双曲錐多様体は双曲的な多面体を貼り合わせたものとみなすことができる。本講演では、1つの多面体から鏡映によって得られる双曲錐多様体について考える。錐多様体の変形は多面体の変形に帰着され、その変形と退化について具体例をあげる。興味深い例として、錐角が減少するにも関わらず退化する双曲錐多様体が存在する。
-
日時:2023年5月30日(火),15:00-16:30
場所:理学部B707号室
講師:東條 広一 氏 (特定国立研究開発法人理化学研究所 革新知能統合研究センター)
題目:等質空間上の調和指数型分布族について
指数型分布族は情報幾何の分野で重要な役割を果たし,ベイズ推定においても重宝される.正規分布族やガンマ分布族などのよく使われる指数型分布族の多くは等質空間上の対称性を持つ指数型分布族とみなせる.そこで我々は表現論を用いて等質空間上の対称性を持つ指数型分布族を構成する手法を[TY22]において提案した.本講演ではその手法と得られる分布族の性質について具体例を交えて述べる.
本講演は吉野太郎氏との共同研究に基づく.
[TY22] K. Tojo, T. Yoshino, A method to construct exponential families by representation theory, Info. Geo. 5, 493-510 (2022).
-
日時:2023年6月13日(火),15:00-16:30
場所:理学部B707号室
講師:姫野圭佑 氏 (広島大学)
題目:3次元多様体の基本群における generalized torsion の位数について
群において,いくつかの共役元の積で単位元を生成することができる元を generalized torsion という。通常の torsion と同様に,単位元を生成するために必要な共役元の最小個数を,generalized torsion の位数と定める。3 次元多様体の基本群において,generalized torsion を構成した先行研究はいくつかあるが,generalized torsion の位数に関する先行研究は非常に少ない。本講演では,generalized torsion の位数について得られた以下の結果を紹介する。
・位数 2 の generalized torsion を基本群に持つ 3 次元多様体を決定した。
・ある条件をみたす Seifert 多様体が,位数 3 の generalized torsion を基本群に持つことを示した。議論の一部で,群の stable commutator length と quasimorphism を用いた。
-
日時:2023年7月11日(火),15:00-16:30
場所:理学部B701号室(いつもと部屋が異なります)
講師:栗原 大武 氏 (山口大学)
題目:多変数$P$- ,$Q$- 多項式アソシエーションスキームについて
$P$-かつ$Q$-多項式アソシエーションスキームの分類問題は,代数的組合せ論における中心的問題の一つである.
$P$-, $Q$-多項式アソシエーションスキームの概念を多変数多項式アソシエーションスキームとして拡張することは自然な問題であるが,
これまであまり確立された定義や結果はなかった.
ごく最近,Bernard, Cramp\'{e}, d'Andecy, Vinet, Zaimi [arXiv.2212.10824]
が,
2変数$P$-, $Q$-多項式アソシエーションスキームの定義を与えた.
この講演では,Bannai, Kurihara, Zhao, Zhu [arXiv:2305.00707]
の結果を紹介する.
すなわちBernardらの定義を拡張し,
多変数$P$-, $Q$-多項式アソシエーションスキームの定義を与える.
さらに多変数$P$-, $Q$-多項式アソシエーションスキームの例として,
多くの興味深いものが存在することも紹介する.
-
日時:2023年10月24日(火),15:00-16:30
場所:理学部B707号室
講師:三石 史人 氏 (福岡大学)
題目:測度距離空間の錐, 特にコーシー分布の集中
グロモフは測度距離空間全体に集中位相と呼ばれる位相を導入した。集中位相は空間の次元を無限大に発散させたときの振る舞いを知るのに役立つ。例えば球面の次元を無限大に飛ばした挙動(いわゆる測度集中現象など)が集中位相によって理解される。適当なリスケールの下では、球面列の集中(より正確には更なる一般化収束概念)は、塩谷氏によってガウス分布と非常に関わっている事が知られている。今回我々は、コーシー分布に着目し、その集中位相による振る舞いを決定した。これは一般には、測度距離空間の錐の集中として論じる事ができる。本講演は福岡大学の江崎翔太氏、九州大学の数川大輔氏との共同研究に基づく。
-
日時:2023年11月21日(火),15:00-16:30
場所:オンライン (Zoom)
講師:中島 直道 氏 (早稲田大学)
題目:特異点論から見る情報幾何学
情報幾何学は確率分布からなる集合を可微分多様体とみなしその構造を研究する学問分野であり,統計科学や情報科学等の理論へ統一的な幾何学的解釈を提供する.特に甘利・長岡により導入されたリーマン多様体上の双対平坦構造は情報幾何学における主要な空間概念であり,アファイン微分幾何学やシンプレクティック幾何学,ケーラー幾何学等の幾何学諸分野と関連を持つものである.講演者はその中でも特異点論との関連に興味があり,早稲田大学の大本亨氏との共同研究によりリーマン計量の退化を許容する双対平坦構造の一般化を得た.本講演では情報幾何学の基礎と共に講演者らの研究を含めた幾つかの接点について紹介したい.
-
日時:2024年1月16日(火),13:00-14:30
場所:理学部B702号室
講師:中島啓貴 氏 (愛媛大学)
題目:測度距離空間全体の空間の位相的性質
本講演は数川氏との連続講演である.測度距離空間の幾何学は,ひとつひとつの測度距離空間を考えるのではなく,空間たちの空間を考えるところに醍醐味がある.M. Gromovはボックス距離とオブザーバブル距離という2つの距離を測度距離空間の(同型類)全体の空間に導入し豊かな理論を展開した.特に「任意の1リプシッツ関数がほぼ定数関数になる」という高次元空間に特有の現象,いわゆる「測度の集中現象」とこれらの距離の関係は興味深い.今回の講演では,これら2つの距離の定義について解説し,これらの距離に関して局所コンパクト性などの位相的性質を満たすことについて説明する.本講演は九州大学の数川大輔氏,東北大学の塩谷隆氏との共同研究に基づく.
-
日時:2024年1月16日(火),15:00-16:30
場所:理学部B702号室
講師:数川大輔 氏 (九州大学)
題目:測度距離空間全体のスケーリング作用に関する主束構造
本講演は中島氏との連続講演である.測度距離空間の収束理論に関連して,測度距離空間の(同型類)全体の空間の幾何学も興味深い対象である.本講演では,中島氏の講演に続き,ボックス距離・オブザーバブル距離を備えた測度距離空間全体の空間に定まるスケーリング作用に関する構造について主にご紹介したい.各測度距離空間に対して距離関数を定数倍するというスケーリング作用が,全体空間に非自明かつ局所自明な主束構造を誘導するということが主結果である.本講演は愛媛大学の中島啓貴氏,東北大学の塩谷隆氏との共同研究に基づく.
-
日時:2024年1月17日(水),15:00-16:30
場所:先端研405N(いつもと部屋が異なります)
講師:高田祐喜・梅原雅顕 氏 (東京工業大学)
題目:球面および双曲平面における測地三角形にまで生き残るようなEuclid平面上の三角形の心について
重心・内心・外心・垂心をはじめ,ユークリッド平面上の三角形には非常に多くの心の存在が知られている.
本講演では,このような心の中で,特に3個の直線の交点として表されるような心(直線心とよぶ)を定義し,そのような心が双曲平面上の測地三角形に対して「心」として残ることと,「球面三角形の心」として残ることが同値であることを示す.
応用として,具体的な Euclid 平面の心について,それらが双曲平面あるいは球面上の三角形の心として生き残るかどうかを議論する.