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日時:2022年5月10日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:小菅 亮太朗 氏 (東京大学)
題目:曲面の写像類群のChillingworth部分群について
Chillingworth部分群とはTorelli群の元であって曲面の特異点を持たないベクトル場のホモトピー類への作用が自明であるような元からなる部分群である. 本講演ではChillingworth部分群について得られた二つの結果のうち, (1)について中心に紹介し, 余裕があれば(2)についても触れたい.
(1)Johnson準同型のChillingworth部分群上への制限が誘導する二次の有理係数群コホモロジー群の間の準同型写像について調べ, そのkernelを決定した.
(2)ある構造付き3次bordism群に値を持つ準同型写像を構成した. この準同型写像はJohnson準同型, 森田氏によるCasson不変量に関連するある準同型写像$d$を復元し, Chillingworth部分群のtorsionを無視した可換化を与えることが期待される準同型写像である.
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日時:2022年5月17日(火),15:00-16:30
場所:理学部B707号室
講師:寺本 圭佑 氏 (広島大学)
題目:擬球的曲面の焦面について
3次元ユークリッド空間内の曲面でガウス曲率が負で一定のものを擬球的曲面という。この曲面は可積分方程式であるサイン・ゴルドン方程式の解と密接に関係しており、微分幾何のみならず可積分系、偏微分方程式からの研究も盛んに行われている。擬球的曲面は一般に特異点を持つことが知られているが、その焦面(縮閉面)は特異点のない曲面になり得る。特に、これらの曲面の代表例である擬球の焦面は極小曲面である懸垂面となることが知られている。本講演では、焦面に現れる特異点型の特徴づけや焦面の曲率のサイン・ゴルドン方程式の解による明示的な表示を紹介する。また、焦面が極小曲面になるための条件についても述べ、例を紹介する。
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日時:2022年6月7日(火),15:00-16:30
場所:理学部B707号室
講師:金田 伸 氏 (広島大学)
題目:向き付け不可能な極大曲面とその特異点について
3次元ユークリッド空間の完備極小曲面に関する研究はW. H. Meeks 氏によりメビウスの帯型の曲面が構成されたことから始まった。このメビウスの帯型の曲面以降、数多くの向き付け不可能な極小曲面が構成された。3次元ミンコフスキー空間の向き付け不可能な極大曲面に関する研究は藤森祥一氏とF. J. Lopez氏により始められた。平面でない極大曲面は極小曲面と異なり必ず特異点をもつことが知られており、新たな曲面の構成とその曲面に現れる特異点の形状に関する研究は盛んに行われている。藤森氏とLopez氏はメビウスの帯型極大曲面を構成したが、その特異点の形状については未調査であった。本講演では、新たに構成した向き付け不可能な極大曲面や既知の曲面の特異点の形状について解説する。
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日時:2022年6月21日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:藤野 弘基 氏 (名古屋大学)
題目:単葉調和関数論とKrustの定理の拡張
三次元ユークリッド空間内の極小曲面に対するKrustの定理は, 極小曲面が凸領域上のグラフとして書ける場合にその同伴族の各曲面(特に共役極小曲面)もグラフであることを保証する. この定理はKarcherの論文で初めて紹介され, 同論文内である種の埋め込み曲面を構成するために使われた. この手法は, 藤森氏の最近の研究でも見られるように, 曲面の埋め込み性を示すための標準的なテクニックとなっている.
本講演ではKrustの定理を(ユークリッド空間を越えた)より広い曲面の変形族に拡張する. その際, 単葉調和関数論の近年の発展を援用すると非常にシンプルな証明を与えることが可能である. 本講演は赤嶺新太郎氏(日本大学)との共同研究に基づく.
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日時:
2022年7月5日(火),15:00-16:30 2022年8月2日(火),15:00-16:30 (台風4号接近のため延期)
場所:理学部B707号室
講師:鈴木 航介 氏 (広島大学)
題目:優良格子点法による多次元数値積分
多次元関数の数値積分法として、一様ランダムにとった点集合上の関数値の平均を近似値とするモンテカルロ法がよく知られている。しかし、その収束速度は十分に速いとはいえない。
準モンテカルロ法は、超一様な点集合を使うことでより高速な収束を達成する数値積分法である。本講演では、主に点集合としてよい格子(トーラス上の有限部分群)を用いる優良格子点法に着目し、周期的で滑らかな関数の積分誤差とフーリエ解析との関係や、よい格子の生成アルゴリズムを紹介する。
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日時:2022年11月22日(火),15:00-16:30
場所:理学部B707号室
講師:直江 央寛 氏 (中央大学)
題目:Shadows of 2-knots and complexity
シャドウとは,4次元多様体に2-骨格として埋め込まれた2次元の多面体であり,領域毎のある種の重みを適切に備えることで4次元多様体の表示として扱うことができる.また,シャドウが曲面を埋め込みとして含んでいると,それは4次元多様体内では一般に結び目になっている.この状況を踏まえて曲面結び目の研究をシャドウで行うというのが本研究の概要である.とくに,本講演では shadow-complexity と呼ばれる非負整数値不変量を2次元結び目に対し定義し,その値が0および1であるような2次元結び目が決定できたため,そのことについて報告する.
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日時:2022年11月29日(火),15:00-16:30
場所:理学部B707号室
講師:高橋 夏野 氏 (大阪大学)
題目:コルクのトライセクション種数について
トライセクションとは、4 次元多様体の 1 ハンドル体への分解であり、Heegaard 分解の 4 次元における類似概念として捉えることができる。3 次元多様体に対して Heegaard 種数が定義されるのと同様に、4 次元多様体に対してもトライセクション種数と呼ばれる素朴な不変量が定義される。本講演では、コルクと呼ばれる 4 次元多様体のある無限族に対してトライセクション種数を決定し、最小種数を実現するトライセクションの構成について述べる。また、ある境界付き 4 次元多様体のエキゾチック対が許容する種数の小さいトライセクションについて紹介する。
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日時:2022年12月13日(火),15:00-15:40
場所:理学部B707号室
講師:青山 楓 氏 (広島大学), 北川 大輝 氏(広島大学), 今井 勝喜 氏 (広島大学)
題目:3次元非周期タイリングの可視化とコロナ極限
タイリングとは空間を可算個のタイル(コンパクト領域)で埋め尽くす操作であり, 隣接関係を定義することができる. コロナ極限は結晶成長の単純なモデルであり, タイリングとその隣接関係によって導かれる. 本研究では, 3次元タイリング上のコロナ極限を考える際の空間把握の難しさを解決するための手段として, Hololens2 を用いたAR による可視化システムを構築した.また, 具体例として3次元非周期的タイリングの構成を行なった.