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日時:2021年5月11日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:奥田 隆幸 氏 (広島大学)
題目:Delsarte theory on compact homogeneous spaces
アソシエーションスキームやコンパクト等質空間において, 幾何学的性質に着目して有限部分集合を調べる分野を符号理論, 関数解析的性質に着目して有限部分集合を調べる分野をデザイン理論と呼ぶことにする. 符号理論とデザイン理論は球フーリエ変換を通じて密接に関係しており, それらの関係性を通じて符号理論やデザイン理論にアタックする手法を Delsarte 理論と呼ぶ.
本講演では, よく知られている球面上の Delsarte 理論を振り返りながら, 一般論としてのコンパクト等質空間上の Delsarte 理論について紹介する.
(北九州高専の栗原大武氏との共同研究内容を含む)
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日時:2021年5月18日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:寺本 圭佑 氏 (広島大学)
題目:波面の非有界な主曲率に対する焦曲面
波面とは特異点をもつ曲面の一種であり、
特異点においても単位法線ベクトル場が定義されているものをいう。
波面の非退化な特異点において、主曲率の一つは滑らかな関数に拡張できるが、
他方は非有界な関数になることが知られている。
しかし、非有界な主曲率関数の逆数は滑らかな関数であり、
これを用いて非有界な主曲率関数に対する焦曲面を定義することができる。
本講演では、波面の非有界な主曲率に対する焦曲面に現れる特異点や
幾何学的性質の初期波面の幾何学的性質による特徴づけについて紹介する。
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日時:2021年5月25日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:Serban Matei Mihalache 氏 (東北大学)
題目:Hopf代数と分岐スパインから構成される3次元多様体の不変量
本講演では, 有限次元, 対合的, (余)モジュラー なHopf代数を用いて向き付けられた閉3次元多様体の不変量を構成する方法について述べる. これは, 1. 3次元多様体を分岐スパイン(付加構造が入った理想3角形分割)で組み合わせ的に表示し, 2. Hopf代数から構成される5角関係式の解を分岐スパインの頂点(理想3角形分割の4面体)に対応させ 3. この対応から得られるスカラーが分岐スパインの取り方によらないことを示して構成される. 時間に余裕のある場合, 一般のHopf代数から不変量を構成する方法についても述べる. 本研究は鈴木咲衣氏と寺嶋郁二氏との共同研究である.
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日時:2021年6月15日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:石橋 典 氏 (京都大学数理解析研究所) 、湯淺 亘 氏 (京都大学数理解析研究所)
題目:Skein and cluster algebras of marked surfaces without punctures for sl(3)
代数群Gに付随した曲面上のG-平坦接続のモジュライ空間(G-指標多様体)の量子化の方法として、スケイン代数によるものと量子クラスター代数によるものが研究されてきた。前者は曲面上の閉じたwebに付随したトレース関数の非可換化、後者は曲面の理想三角形分割に付随したクラスター座標の非可換化に基づく。境界に有限個の点を指定した点付き曲面およびG=SL(2)に対し、Muller (2016) は端点で適切な境界条件およびスケイン関係式をみたすwebからなるスケイン代数を導入し、これが対応する量子クラスター代数と同型となることを示した。本講演ではMullerの結果のSL(3)版として、端点での適切な境界条件およびスケイン関係式を課したsl(3)-スケイン代数を導入し、対応する量子クラスター代数およびその上界代数との比較を行う。少なくとも曲面が簡単な場合には三者は全て同型である。またelevation-preserving webについて、そのクラスター展開から得られるLaurent多項式の正値性を示す。
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日時:2021年7月13日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:赤嶺 新太郎 氏 (日本大学)
題目:極大曲面に対する鏡像の原理と関連する話題について
3次元ユークリッド空間内の極小曲面と3次元ミンコフスキー空間内の極大曲面はともに平坦な空間内で平均曲率が恒等的に零になるという性質を備えた曲面である.二種類の曲面はどちらもリーマン面上の調和関数を用いて記述できるため,調和関数に対するSchwarzの鏡像の原理によって曲面の様々な対称性が従うことが知られている.
本講演では,極小曲面や極大曲面に対する従来の鏡像の原理を紹介しつつ,極大曲面の境界に現れる光的線分に対して,従来のそれとは異なったある種の鏡像の原理が明らかになったことを紹介する.
また,双対性と呼ばれる対応で極小曲面と極大曲面を一対一に対応させたときに,曲面の対称性にはどのような関係があるか,といったことを始めとした関連する話題や諸結果を時間が許す限り紹介したい.本講演の内容は藤野弘基氏(名古屋大学)との共同研究に基づく.
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日時:2021年7月20日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:北澤 直樹 氏 (九州大学)
題目:Round fold maps on 3-dimensional closed manifolds
折り目写像(fold map)は、Morse 関数の自然な高次元化である。Thom や Whitney による 20 世紀半ばの研究に始まり、関連した研究が多くなされてきた。一つの流れとして、1990 年代以降、3 次元多様体論と関係した研究も多くなされている。3 次元閉多様体は必ず平面への折り目写像を持つ。一般に折り目写像の特異点集合への制限は、余次元 1 のはめ込みであるが、3 次元向き付け可能閉多様体が、グラフ多様体である時かつその時に限り、特異点集合への制限が埋め込みとなるような平面への折り目写像を持つことが、佐伯修氏(九州大学)により示されていた。今回、この特徴づけに用いる写像を ”round” なものにできることが分かった : 折り目写像は、特異点集合の像が同心円状に埋め込まれた球面の非交和であるとき、round であるという。今回、これについて、関連する話とともに紹介する。本内容は佐伯氏との共同研究に基づく。
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日時:2021年7月27日(火),15:00-16:20
場所:オンライン (Zoom)
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講師:小川 健翔 氏 (広島大学)
題目:局所JohnsonグラフとGalois理論
「局所構造の制約が大域的な構造にどのような影響を与えるか?」という問題は幾何学における重要なテーマの一つである. グラフ理論において, Galois 圏の観点から上記の問題を考察したい. より正確には, モデルとなるグラフを1つ固定し, そのグラフと同じ局所構造を持つグラフのクラスとの関係性について調べるものである. 本講演では, Johnson グラフと呼ばれる対称性の非常に高いグラフについて, そのグラフと同じ局所構造を持つグラフについて考察し, 特に Johnson グラフがある普遍性を持つことを紹介する.
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講師:西村 勇哉 氏 (広島大学)
題目:Classical link recognition の時間計算量について
仮想絡み目図式が与えられたとき,その図式があらわす仮想絡み目が古典的絡み目かを判定する問題を classical link recognition という.本講演では,この問題が NP という計算量クラスに属すること,およびこの問題に対する指数時間アルゴリズムを紹介する.本講演の内容は,市原一裕氏(日本大学)と谷聖一氏(日本大学)との共同研究に基づく.
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講師:金田 伸 氏 (広島大学)
題目:高種数の向き付け不可能な極大曲面について
3次元Euclid空間の極小曲面と3次元Minkowski空間の極大曲面はともに平均曲率が恒等的に零になる曲面であり、類似の表現公式を持っている。
向き付け不可能な極小曲面に関する研究はW. H. Meeks氏によりMoebiusの帯型の極小曲面が構成されたことにより始まった。その後、F. J. Lopez氏によるKleinの壺型が構成され、その曲面はLopez氏とF. Martin氏等により高種数に拡張された。
一方、向き付け不可能な極大曲面の例は藤森祥一氏とLopez氏によるMoebiusの帯型とKleinの壺型が構成されていたが、高種数のものは構成されていなかった。本講演では高種数の向き付け不可能な極大曲面の構成法を紹介する。本講演の内容は藤森祥一氏との共同研究に基づく。
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日時:2021年10月26日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:菅原 朔見 氏 (北海道大学)
題目:Divides with cusps and Kirby diagrams for line arrangements
$\mathbb{C}^l$内のアフィン超平面の有限集合を超平面配置という。超平面配置のトポロジーにおいて、超平面配置が実超平面を複素化して得られる場合は、補集合のセル分割が実構造を用いて記述されることが知られている。本講演では、特に$l=2$すなわち直線配置の場合に対して、より精密な情報であるハンドル分解を得ることができたので、それを紹介する。また、直線配置の補集合は実$4$次元多様体となり、Kirby図式によりハンドル分解を表すことができる。直線配置の補集合のKirby図式を、divideの一般化であるカスプ付きdivideを用いて記述することができたので、それについても紹介する。本講演の内容は、吉永正彦氏(北海道大学)との共同研究に基づく。
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日時:2021年11月16日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:野坂 武史 氏 (東京工業大学)
題目:閉3次元多様体のいくつかの普遍被覆のセル複体
閉3次元多様体の位相的不変量の研究では、その普遍被覆空間に関するセル複体と局所系係数カップ積の記述が求められる場面が幾らかある。そこで講演者は或る性質(H)を満たす閉3次元多様体(これは一定広いクラス)に対して、その記述を具体的に与えた。応用として、結び目に沿った巡回分岐被覆空間に関するlinking形式について計算公式を与え、非可換群のDijkgraaf-Witten不変量の計算例も与えた。本講演では、その記述の鍵となる“恒等子“を説明し、応用例も紹介する。
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日時:2021年11月30日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:川添 浩太郎 氏 (明治大学)
題目:The one-row colored $\mathfrak{sl}_{3}$ Jones polynomial for pretzel links
色付きJones多項式とは、向き付きの絡み目の不変量である。一般の$\mathfrak{sl}_{3}$色付きJones多項式を計算することは難しく、具体的な絡み目に対しては、一部のトーラス絡み目と二橋絡み目のみ知られている。本講演では、$\mathfrak{sl}_{3}$色付きJones多項式に制限を加えることにより、Kuperbergによって導入された$A_{2}$ブラケットを用いて得られた$A_{2}$ Web spaceに関する公式とプレッツェル絡み目に対する結果を紹介する。
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日時:2021年12月7日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:Ivan I. Smalyukh 氏 (University of Colorado Boulder)
題目:Knots in Soft Matter
Topologically nontrivial fields and vortices frequently arise in classical and quantum field theories, plasmas, optics, cosmology, hard condensed matter and atomic systems. Their complex structures are expected to follow predictions of mathematical theorems and theories but are rarely accessible to experiments. On the other hand, soft matter systems, such as colloids and liquid crystals, offer the complexity in degrees of freedom and symmetries that allow for probing topologically analogous phenomena on experimentally accessible scales. In my talk, I will discuss how surfaces of colloidal knots and handlebodies interact with the liquid crystalline molecular alignment fields and how topological knot solitons can emerge as static field configurations within the chiral colloidal ferromagnets. I will show how such synergistic combinations of topology and self-assembly paradigms can emerge as an exciting scientific frontier of topological condensed matter.
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日時:2021年12月21日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:石川 勝巳 氏 (京都大学数理解析研究所)
題目:Extended quandle spaces and their applications
カンドルとは群の共役演算を一般化したような公理を満たすある種の代数系であり、
結び目理論などへの応用が知られている。カンドルに対しそのカンドルホモロジーをホモロジー群として持つような二種類の空間 quandle space, extended quandle space が定義されるが、本講演では、これらの間の関係について得られた結果を紹介するとともに、それを用いたカンドルホモロジーの計算やカンドルを用いた結び目不変量の有効性の問題への応用についてお話ししたい。
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日時:2022年1月11日(火),15:00-16:00
場所:オンライン (Zoom)
講師:Yi-Sheng Wang 氏 (Academia Sinica)
題目:Essential Annuli in Handlebody-knot Exteriors
A handlebody-knot is a handlebody embedded in three dimensions. They exhibit different behaviors with different genera. Genus one handlebody-knots are equivalent to classical knots, whereas the genus two case is the primary concern of the talk.
Based on Thurston’s hyperbolization theorem, a handlebody-knot exterior admits a complete hyperbolic structure with totally geodesic boundary if and only if the exterior contains no essential disks, annuli or tori. A hyperbolic handlebody-knot is known to be rigid in the sense that its symmetry group, the group of isotopy classes of self-homeomorphisms of the 3-space preserving the handlebody-knot, is finite. On the other hand, a recent result of Funayoshi-Koda shows that a non-hyperbolic genus two handlebody-knot has a finite symmetry group if and only if its exterior contains no essential disks (irreducible) or tori (atoroidal) but contains an essential annulus (cylindrical).
Irreducible, atoroidal, cylindrical handlebody-knots are the main theme of the talk. We discuss criteria for a cylindrical handlebody-knot to be irreducible and atoroidal and the classification theorem of essential annuli due to Koda-Ozawa, and then move on to conditions under which they admit a unique essential annulus of a given type. Lastly, implications of the uniqueness results for their
symmetry group structures are presented.