広島大学 トポロジー・幾何セミナー 講演者アブストラクト
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4/19:丹下 基生 氏 (筑波大学)- On cork twists
コルクとは、4次元のエキゾチック構造を生み出すよい題材である。
この講演では、有限位数をもつコルクの例について解説する。また、Gompfによる
無限位数コルクを応用することで、多くの無限位数コルクを構成する。
4/26:奥田 隆幸 氏 (広島大学)- Spherical Fourier transforms and Delsarte theory on compact symmetric spaces
階数1のコンパクト対称空間 X (自然な意味で測度距離空間と思える)の有限部分集合 Y について以下の二つのことを考える.
(1)[符号理論] Y は有限距離空間としてどのようなものか?
(2)[デザイン理論] Y 上の数え上げ測度を X 上の測度に押し出したものは, X 上の自然な確率測度をどれくらい近似しているか?
X 上の球フーリエ変換の理論を用いると, 上記の二つの問の間に関係性を見出すことができ, その関係性を基に組合せ論が展開される.
これを(階数1のコンパクト対称空間上の) Delsarte 理論という.
本講演では階数が高い場合にも Delsarte 理論が拡張されることを紹介し,
特に複素グラスマン多様体の有限部分集合として大対蹠集合を考えた場合に得られた結果を紹介する(栗原大武氏[北九州高専]との共同研究).
また X の部分集合の替わりに X の商を考えると Delsarte 理論がどのような形で定式化されるべきかを考察し, Poisson の和公式や Selberg の跡公式との関連を述べる(見村万佐人氏[東北大学], 野崎寛氏[愛知教育大学] との共同研究内容を含む).
5/10:久野 恵理香 氏 (東京工業大学)- Disk graphs and right-angled Artin subgroups of handlebody groups
有限グラフ $\Gamma$ の right-angled Artin group $A(\Gamma)$ に関して, 2012年に
Koberda が $\Gamma$ が向き付け可能曲面 $S$ の曲線グラフ $\mathcal{C}(S)$ の誘導部分グラフであるならば
$A(\Gamma)$ は $S$ の写像類群 ${\rm Mod}(S)$ の部分群になることを示し, 2013年に Kim-Koberda
が十分高い複雑度を持つ曲面 $S$ に対してはその逆は成り立たないことを示した. 本講演では,
ハンドル体群と円板グラフに対して同様のことを考え得られた結果について報告する.
5/17:見村 万佐人 氏 (東北大学)-
Strong algebraization of fixed point properties
バナッハ空間(ないしは族)を固定したとき,有限生成群のそれ上の
等長作用が常に大域的固定点を持つ,という性質を固定点性質と呼ぶ.
ヒルベルト空間全体のなす族を考えたときの固定点性質は,「Kazhdan
の性質(T)」と呼ばれる群の剛性と同値であることが知られている.
離散群の線型表現の分類は連続群と違い,群が少しでも複雑になると
手に負えない.これが原因で,離散群の固定点性質を直接示すことは
当面の間著しく困難であった.Y. Shalom は1999年の論文(Publ. IHES)
で,固定点性質を部分群に分けて,最後に“パッチワーク”する,と
いう手法を応用し,上の困難に対し初のブレイクスルーをもたらした.
しかし,Shalomのパッチワーク戦略では群の部分群による「有界生成
(Bounded Generation)」という厄介な要請が本質的であって(
後述するように実はこれは気のせいだったのだが,長年そう信じられて
きたように講演者には思われる),この要請がShalomの手法を適用する
際の致命的な弱点となっていた.
今回,講演者はShalomのパッチワーク(1999,2006)の思想を発展させ
て,「有界生成」条件を舞台から追いやることに成功した.講演者の条件
は,部分群たちを広げていくある“ゲーム”の必勝戦略として記述される.
講演ではこの“ゲーム”の内容・証明のあらすじをお話したい.これに
より,「有界生成」の成立がわからないような状況でもパッチワーク戦略を
適用できうるようになった.系として,いろいろな離散群が強い固定点性質
をもつことを示せ,しかも証明も非常にコンセプチュアルである.こうした
応用面についても概観したい.
6/7: 古川 遼 氏 (東京大学)- 3-dimensional braids and codimension two contact embeddings
閉接触多様体の余次元2接触埋め込みの存在問題にはGromovのホモトピー原理が適用できず, 知られている障害も多くはない.
本講演では, 1次元閉ブレイドの高次元への一般化を用いて余次元2接触埋め込みを構成する方法を紹介する.
この方法を応用し, 3次元球面上の任意の接触構造が標準5次元接触球面へ接触埋め込み可能になることなどを見る.
本講演の内容はJohn Etnyre氏との共同研究によるものである.
7/12:
安部 哲哉 氏(大阪市立大学 数学研究所 (OCAMI))- The $d_3$-invariant of fibered knots
We introduce the $d_3$-invariant of fibered knots.
For a given fibered knot $K$, this invariant is defined to be
the $d_3$-invariant of the contact structure in $S^3$ associated to
$K$ (via Thurston-Winkelnkemper construction). In this talk,
we explain why it is well-defined and calculate this invariant
for some fibered knots.
7/12:
レオンチエフ アレックス (Alex Leontiev) 氏(東京大学大学院数理科学研究科)- 不定値直交群O(p,q)の対称性破れ作用素
対称性破れ作用素としてここで扱うのは、
G = O(p + 1, q + 1) の最大次元の放物型部分群 P から誘導して得られる
球退化主系列表現 I(λ) から、 G の O(p, q + 1) と同型な閉部分群 G ′の球退化主系
列表現 J(ν) への G ′ 絡み作用素である。
この講義では小林氏と Speh 氏の O(n + 1, 1) ↓ O(n, 1) の対称性破れ作用素について2015年の論文の一般化を目指し、小林俊行氏と共同研究。
得られた結果が対称性破れ作用素の分類、留数定理、因数分解恒等式と対称性破れ作用素の像の計算を含む。
9/13:
栗原 大武 氏 (北九州工業高等専門学校)
- 距離正則グラフの Euclid 歪みについて
「Euclid 歪み」は距離空間を Euclid 空間に埋め込んだとき、元の距離構造を Euclid 空間でどのくらい保てるかを表す指標として与えられる。
一般的に距離空間が与えられたときに、その距離空間の Euclid 歪みの正確な値を決定することは易しくはない。
今回の発表では距離正則グラフと呼ばれる特別なグラフについてそのEuclid 歪みについて議論したいと思う。
さらにグラフの直径が小さい場合にEuclid 歪みが完全に決定できることを紹介する。
10/4:
野坂 武史 氏 (九州大学数理学研究院)
-結び目群表現の基本類について
本テーマは,結び目補空間の3-ホモロジー類である.
これを量的に扱う常套手段として次が自然であろう:
即ち, 結び目群表現 $f : \pi_1(S^3 \setminus K)$-> Gによって押出し, 群3-コサイクルとペアリングである.
当ペアリングは幾らかの場面で現れ, 例えば, 双曲体積やトDijkgraaf-Witten不変量やトリプルカップ積などがある.
主結果とは, 当ペアリングに関し (単体分割を用いず, カンドルコサイクル不変
量に近図的計算法を与えたことである, 但し$K$はnon-cableな素な結び目か, 双
曲絡み目とする.
本講演ではこの計算法のアイディアと方針を述べる.
その際に, malnormal性や幾何構造と関わり, どう計算法に関わるか述べる.
10/11:
笹木 集夢 氏 (東海大学理学部)
-Admissible representations, multiplicity-free representations
and visible actions on non-tube type Hermitian symmetric spaces
本講演では,エルミート対称空間が管状型・非管状型であることの特徴付けを
表現論の重複度や可視的作用の視点から与えられることについて解説する.
特に,本講演では関連する群の分解定理や群作用による軌道分解について詳細を述べる予定である.
10/18:
中西 敏浩 氏 (島根大学大学院総合理工学研究科)
-種数2の閉曲面の写像類群の有限部分群の表示について
種数2の閉曲面の写像類群の有限部分群をDehn-Lickorish生成系を用いて表示する。
これは写像類群の有理表現(中村豪氏との共同研究による)の応用である。
11/8:
村井 聡 氏 (大阪大学大学院情報科学研究科)
-多様体の三角形分割の組合せ論
与えられた閉多様体が最小で何個の頂点で三角形分割できるか?
という問題を考えてみよう. この問題は一見簡単そうに見えるのだが,
実はこのような問題を調べる為に有効な手段が少なく,
トーラスや射影空間のような簡単な多様体であっても厳密な答えを得るのは難しい.
この最小頂点数の問題は80年代にBrehumとKuhnelらにより幾つかの基本的な結果が与えられた後はしばらく大きな進展はなかったが,
ここ10年ほどで多様体の三角形の面の個数に関する研究手法が大きく発展してきたことに伴い,
最近BrehumとKuhnelらの仕事を拡張する様々な結果が得られ始めている.
本講演では上記のような多様体の三角形分割の頂点数や面の個数に関する研究の最近の動向を時間の許す限り紹介したい.
11/15:
大場 貴裕 氏(東京工業大学理工学研究科)
-Higher-dimensional contact manifolds with infinitely many Stein fillings
与えられた接触多様体に対し,それを境界にもつ Stein 領域のことを,
その接触多様体の Stein 充填という.これまでに,Stein 充填を無限個もつ
3 次元接触多様体の例は数多く知られている.一方で,5 次元以上の接触多様体で
そのような例は知られていない.3 次元の場合には,オープンブック分解や
Lefschetz ファイバー空間といった多様体上のファイバー構造を利用して構成されたが,
その際に曲面の写像類群が重要な役割を果たしている.高次元の場合も,
これらの空間に対応する概念はあるものの,写像類群が高次元多様体のものとなり,
その解析は一般には難しい.本講演では,ファイバーとなる高次元多様体として
特別なものを選ぶことにより,ファイバー構造を用いて Stein 充填を無限個もつ
高次元接触多様体が構成できることを紹介する.
11/29:
高尾 和人 氏 (京都大学数理解析研究所)
-Singularities of three functions and the product maps
Johnson は、可微分写像 (f, g): R^3 -> R^2 の安定特異点が、関数 f: R^3 -> R の
安定特異点になるための条件を、(f, g) の特異値集合の言葉で与え、関数のホモトピーを
調べる研究に応用した。本講演では、可微分写像 (f, g, h): R^3 -> R^3 の安定特異点が、
関数 f: R^3 -> R や写像 (f, g): R^3 -> R^2 の安定特異点になるための条件を、(f, g, h) の
特異値集合の言葉で与える。そしてそれを、写像のホモトピーを調べる研究に応用する試みと、
その背景にある3次元多様体論の問題についても紹介したい。
12/6:
John Parker 氏(東京工業大学,Durham大学)
-A complex hyperbolic Riley slice
(Joint work with Pierre Will) In the late 1970s Robert Riley investigated
subgroups of SL(2,C) generated by two parabolic transformations.
The conjugacy classes of such groups may be parametrised by one complex
number. Riley investigated for which values of this complex number the
group is discrete. In our work we investigate subgroups of SU(2,1)
generated by two unipotent parabolic maps whose product is also unipotent.
The conjugacy classes of such groups may be parametrised by two real
numbers and we investigate values of these parameters where the group
is discrete. We give an explicit open set where the group is discrete
and free. Moreover, two consequences of our work are, first, that we
prove a conjecture of Schwartz for complex hyperbolic (3,3,infinity)
triangle groups and, secondly, that we give a spherical CR uniformisation
of the Whitehead link complement with unipotent holonomy.
12/6:
梅原 雅顕 氏(東京工業大学)
-カスプ辺とツバメの尾の等長変形について
カスプ辺,ツバメの尾は,3次元 Euclid 空間の
正則曲面の平行曲面に現れる代表的な特異点である.
本講演では,これらの特異点の等長変形の問題について,
特異点付近の第一基本形式が与える半正定値計量の
等長実現の立場から,筆者らが最近得た結果を紹介する.
1/17:
島本 直弥 氏(東京大学大学院数理科学研究科)
-Description of infinite orbits on multiple flag varieties of type A
簡約型等質空間X=G/H上の関数空間にあらわれるGの既約表現の重複度が有限であることと,Hが実旗多様体G/P_G上に開軌道を持つこととが同値であることが1990年初頭に小林-大島によって発見・証明された.このような空間Xは小林によって実球等質空間と名付けられた.一方で,Hが実旗多様体G/P_Gに開軌道を持つことは,軌道が有限個であることと同値であると1990年代までにBrion, Vinberg, Kimelfeld, Bien, 小林,松木らによって証明された.
他方,Gの一般の放物型部分群Pによる旗多様体G/Pにおいては,HがG/P上に開軌道を持ちながらも,軌道の個数が無限個になることが起こりうる.Magyar-Weyman-Zelevinskyは1998年に,Gとして一般線形群GL_nのm回直積群,Gの簡約部分群Hとしてその対角部分群をとった時,G/P上のH-軌道が有限個となるような放物型部分群Pを分類し,さらにその場合の軌道の組み合わせ論的な記述を行った.
この分類に漏れる例として,mを4以上n+1以下とし,Gの放物型部分群PとしてGL_nのミラボリック部分群のm回直積群を取ると(この時,旗多様体G/PはG-多様体としてn-1次元射影空間のn+1回直積と同型になる),これはG/P上のH-軌道が無限個でありながらも開軌道を持つ典型的な例となる.本講演では,この状況における軌道分解の具体的な記述方法を紹介する.
1/23:
Iain Aitchison 氏 (Melbourne)
-Transcription complexes
We describe a construction of some highly symmetric surfaces and 3-manifolds,
mostly well-known: however, our perspective arises from a simple construction
in DNA replication.
Our original motivation derives from an example of an 8-component link in the
3-sphere described by Thurston,
containing an immersed, filling, totally-geodesic punctured Klein quartic,
which features in a sculpture commissioned by Thurston for MSRI in Berkeley
(`The Eightfold Way').
We offer a new description of this cusped 3-manifold, and of the combinatorics
of Klein's quartic genus 3 surface.
Additionally we will illustrate the general construction by giving a new
construction of Poincar\'e's homology sphere,
and a new description of Bring's surface, illustrating how our perspective
reveals the unexpected encoding of the outer-automorphism of the symmetric group
on six symbols by the combinatorial structure of its natural family of
geodesics.
1/24:
Stefan Rosemann 氏 (岡山大学)
-C-projective transformations on Kahler manifolds
A Kahler manifold is the complex analogue of a Riemannian manifold.
The J-planar curves of the Kahler metric generalize the notion of geodesics:
they are defined by the property that the acceleration is
complex-proportional to the velocity.
In the talk I will discuss the following result which was obtained in a
recent joint work with V. Matveev and A. Bolsinov:
a vector field on a compact Kahler manifold whose flow preserves the set of
J-planar curves is either an isometry
(i.e., a Killing vector field) or the manifold is complex-projective space
with standard metric.
2/7:
吉田 建一 氏 (東京大学大学院数理科学研究科)
-Union of 3-punctured spheres in a hyperbolic 3-manifold
3次元双曲多様体に含まれる本質的な3点穴あき球面は全測地的なものにイソトピ
ックであることが知られている。本講演では、向き付け可能な3次元双曲多様体
に含まれる全測地的な3点穴あき球面を全て考え、その合併の連結成分の位相型
の分類を紹介する。これらの中には非常に特別な型もあるので、具体例を重視し
て説明する。例えば、成分数が3から6の最小ねじれ双曲チェーン絡み目の補空間
に特別な型が現れる。
3/9:
Vladimir Matveev 氏 (Friedrich Schiller University Jena)
-Finsler metrics of constant curvature
I will mostly speak about Finsler metrics of positive constant ?ag curvature
(I explain what is it) on closed 2-dimensional surfaces.
The main result is that the geodesic flow of such a metric is conjugate
to that of a Katok metric
(recall that Katok metrics is are easy and well-understood examples of
two-dimensional Finsler metrics of positive constant flag curvature).
In particular, either all geodesics are closed, and at most two of them
have length less than the generic one, or all geodesics but two are not
closed; in the latter case there exists a Killing vector
field.
Generalizations for the multidimensional case will be given; in
particular I show that in all dimensions the topological entropy vanishes
and the geodesic flow is Liouville integrable.
I will also show that in all dimensions a Zermelo transformation of every
metric of positive constant flag curvature has all geodesics closed.
The results are part of an almost finished paper coauthored with R.
Bryant, P. Foulon, S. Ivanov and W. Ziller.
3/16:
Sang-hyun Kim 氏 (Seoul National University)
-Flexibility of PSL(2,R) representations
Which finitely presented groups arise as subgroups of PSL(2,R)? Unlike the discrete (Fuchsian) case, the general (indiscrete) case of this question is wide-open. We propose a class of torsion-free groups, called "liftable-flexible groups". These groups admit (1) uncountably many, independent, indiscrete faithful representations into PSL(2,R),
(2) uncountably many independent "minimal" quasi-morphisms. Moreover, we have combination theorems for these groups and deduce that all the limit groups are in this class. A key underlying idea is a generalization of Baumslag's Lemma for free groups to a topological setting. This is a joint work with Thomas Koberda and Mahan MJ.
3/21:
Xiaochun Rong 氏 (首都師範大学, Rutgers 大学)
-Gromov-Hausdorff convergence in Metric Riemannian Geometry
I will give a survey on some recent development in Metric Riemannian geometry involving Gromov-Hausdorff convergence of manifolds.
I'll try to make the talk accessible to graduate students.
幹事:
阿賀岡 芳夫 E-MAIL :
agaoka@mis.hiroshima-u.ac.jp
作間 誠 E-MAIL :
sakuma@math.sci.hiroshima-u.ac.jp
田丸 博士 E-MAIL :
tamaru@math.sci.hiroshima-u.ac.jp
古宇田 悠哉 E-MAIL :
ykoda@hiroshima-u.ac.jp
渋谷 一博 E-MAIL :
shibuya@hiroshima-u.ac.jp
土井 英雄 E-MAIL :
doi@math.sci.hiroshima-u.ac.jp
奥田 隆幸 E-MAIL :
okudatak@hiroshima-u.ac.jp
安井 弘一 E-MAIL :
kyasui@hiroshima-u.ac.jp