広島大学 トポロジー・幾何セミナー 講演者アブストラクト
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2/21:八木 潤 氏(高知大学)-環状炭化水素分子の数理モデルの配置空間
(後藤了(国際医療福祉大学),逸見豊,小松和志(高知大学)との共同研究)
環状炭化水素分子はその立体構造により異なる化学的な性質をもつことが知ら
れている。立体構造の数理モデルとしてclosed chain (剛性をもった環状の空間
グラフ)を考え、それらの成す配置空間のトポロジーを調べた。これは立体構造
の変位を追跡することあたり、薬学への応用が期待される。
また、M. FarberやN. Iwaseらにより調べられているtopological complexityと
いう不変量と関連付けることで、我々の結果に一つの解釈が与えられる。
本講演では、環状化合物と配置空間の関係、配置空間に関して得られた結果をご
紹介し、時間があればtopological complexityからの解釈についても触れる予定
である。
1/31:木幡 篤孝 氏(広島大学)-2階の微分作用素のcommutantsについて
不定値直行群のシュレディンガーモデルはユークリッド空間上の
2乗可積分な関数の成すヒルベルト空間上の表現で実現されています。この
モデル上の微分作用素環の極大コンパクト群不変元の成す代数構造を調べ
る際に、極大コンパクト群が回転群を含んでいることを用いて、正実数上のあ
る2階の微分作用素のcommutantsを求める問題に帰着しました。今回は、実
数の開集合上の一般な2階微分作用素のcommutantsの成す代数の構造に
関して、最近分かったことを述べます。
1/17:佐藤 正寿 氏(大阪大学理学研究科) -超楕円的特異レフシェッツ束の局所符号数
レフシェッツ束の一般化として、特異レフシェッツ束が近年研究されている。
任意の有向閉4次元多様体がこの曲面ファイバー構造をもつことが知られており、
ファイバーの種数が1の場合についてはその分類も知られている。
本研究は種数の高い特異レフシェッツ束の位相構造を調べることを目的としている。
本講演では、超楕円的という性質をもつ特異レフシェッツ束については、
その全空間の符号数が特異ファイバーの近傍の様子から計算できることについて述べる。
12/16:丹下 基生 氏(京都大学数理解析研究所) -Lens spaces obtained by Dehn surgeries of S^3 or \Sigma(2,3,5)
There are some restrictions for a lens space to admit
a Dehn surgery.
In this talk we introduce the following four conditions are
a complete criterion for a lens space to admit a Dehn surgery over
S^3 or \Sigma(2,3,5).
i) Fintushel-Stern's quadratic residue
ii) Kadokami-Yamada's Alexander polynomial formula
iii) Ozsvath-Szabo's genus bound
iV) Ozsvath-Szabo's flat-ness and alternate-ness of Alexander polynomial
As a corollary we list doubly primitive knots on S^3 or \Sigma(2,3,5)
12/13:佐治健太郎 氏 (岐阜大学) -3次元球面内の円織面の特異点
線織面等の特別な性質をもつ曲線で作られる曲面の研究は
幾何学において古典的な対象であるが、特異点に注目すると
現代的な観点から見ても興味深い研究対象である。
本講演では3次元球面内の円織面とその特異点について話す。
それから見えてくる特異点の双対性についても触れる。
12/6:久野 雄介 氏(広島大学) -Dehn ツイストの一般化について
単純閉曲線に沿う Dehn ツイストは、曲面の写像類群の基本的な要素である。
本講演では、単純とは限らない閉曲線に対し、それに沿う「一般 Dehn ツイスト」
を
写像類群を拡張するある群の元として導入する。
基本的な問いは、一般 Dehn ツイストが曲面の微分同相から誘導されるか
否か?である。この問いに関連して、(1) 一般 Dehn ツイストの局所性、
(2) 一般 Dehn ツイストが微分同相から誘導されない様な閉曲線の実例、を紹介
する。
時間が許せば、現在進行中の研究についても触れたい。
本講演の内容は部分的に河澄響矢氏(東大数理)との共同研究に基づく。
11/29:前田 定廣 氏(佐賀大学) -A homogeneous submanifold with nonzero parallel mean curvature
vector in Euclidean sphere (with S. Udagawa)
We show that every sufficiently high dimensional Euclidean sphere
admits an odd dimensional Riemannian submanifold $M$ having the
properties: (1) $M$ is a homogeneous submanifold with nonzero
parallel mean curvature vector in the ambient sphere;
(2) $M$ is a Berger sphere;
(3) $M$ is a Sasakian space form of constant
$\phi$-sectional curvature.
Note that our manifold $M$ is diffeomorphic but not isometric
to a Euclidean sphere.
11/22:平澤 美可三 氏(名古屋工業大学) -球面の裏返し
山本稔氏(愛知教育大学)との共同研究
球面の裏返し (sphere eversion by regular homotopy) とは,
3次元空間内の球面を,自己交差を許した連続変形によって裏返すものである.
それが可能なことは1957年にスメールにより抽象的に証明された.それ以来
その具体的なプロセスについて様々な方法が開発されている.
今回,曲面から平面への安定写像の取り扱いから,輪郭線の動きが単純な
裏返しの方法を編み出せたので,それによる裏返しプロセスを詳しく調べた.
曲面の自己交差の形の変化まで含めて,各ステップを黒板に描いて説明する.
11/15:吉永 正彦 氏(京都大学) -Minimal Stratifications for Line Arrangements
複素超平面配置の補集合は「極小CW複体」という効率のよいセル分割を持
つことが
知られている(Dimca, Papadima, Randell)。これは超平面配置の補集合が非常に特
殊な
ホモトピー型を持つことを意味しているが、その貼り付き写像は大変複雑で、あまり
使い勝手が良くない。講演者は最近、二次元の場合に限って、極小セル分割の
dual に対応する「極小ストラティフィケーション」を導入した。基本群の表示など
が
Chamber の組合せ論的な構造から再現できる。
またホモトピー群への応用の可能性について紹介したい。
(本講演の大部分は arXiv:1105.1857 の紹介である)
11/1:本多 正平 氏 (九州大学) -多様体の崩壊と一次元正則集合
多様体の崩壊とはリーマン多様体が適切な仮定の下で,
次元の低い特異な空間に収束する状況を表します.
この状況で極限に出てくる空間に対して,いくつかの未解決問題があります.
それらを紹介し,それらに関係して最近講演者が得た結果についてお話をさせていた
だければと思います.
10/25:清水 理佳(大阪市立大学数学研究所) -結び目図式のひずみ度とひずみ多項式
向き付けられた結び目図式のひずみ度とは図式の複雑さを表すものである。
本講演では結び目図式のひずみ度と交点数の関係や、ひずみ度による交代図式
および素な交代結び目の特徴付けを紹介し、次に結び目図式のひずみ度を用いて
ひずみ多項式を定義してその性質を述べる。ひずみ多項式のひとつの応用として、
全ての図式におけるひずみ多項式の幅の最小値を考え、これを用いて結び目の
概交代数を下から評価する。さらに、河内明夫教授との共同研究として、
別の方法でひずみ多項式と同値な多項式を定義して、結び目の図式や射影図の性質を調べる。
特に結び目射影図に対して、ひずみ度を用いた自然な向きの与え方を紹介する。
10/18:坊向 伸隆 氏 (大阪市立大学数学研究所) -多重調和写像とパラ多重調和写像の関係について(ループ群論に依る)
本講演内容は J.F.Dorfmeister氏との共同研究[1]に基づく。
多重調和写像はリーマン面からの調和写像を、パラ多重調和
写像はローレンツ面からの調和写像をそれぞれ一般化したもの
といえる。多重調和写像とパラ多重調和写像は類似する面もあ
るが、それぞれの定義方程式が楕円型PDEと双曲型PDEで与え
られるという観点からすれば全くの別物である。
本講演では、多重調和写像に対して多重調和ポテンシャルが、
パラ多重調和写像に対してパラ多重調和ポテンシャルがそれぞ
れ対応し、それらポテンシャルを関係付けることにより多重調
和写像とパラ多重調和写像を関係付けられることを報告する。
多重調和写像とパラ多重調和写像を関係付けることにより得
られる系として、3次元ユークリッド空間内のCMC曲面と3次元
ミンコフスキー空間内のCMC曲面を関係付けられる。
参考文献
[1] N.Boumuki and J.F.Dorfmeister, On a relation between potentials for
pluriharmonic maps and para-pluirharmonic maps, Results Math.
(to appear).
8/2:門上 晃久 氏(華東師範大学数学系) -Hyperbolicity and identification of Berge knots of type VII and
VIII
[T. Saito-M. Teragaito]=[ST]
"Knots yielding homeomorphic lens space by Dehn surgery"
Pacific J. Math. 244, no.1, p169-192 (2010)
において、7 型の Berge knot (lens space surgery を持つ knot
の一系列) の hyperbolicity を問うている。この論文中では、
Berge knot の 表示から導かれる "斎藤の双曲性判定条件" を
用いて、ある部分系列が hyperbolic であることを示している。
今回 7, 8 型の Berge knot は、torus knot であると知られて
いる自明な部分系列以外全て hyperbolic であることを示す。
講演者と山田裕一氏の共同研究で得た、7, 8 型を生じる親玉の
2 成分 link の Alexander 多項式が実質用いるものの全てである。
7, 8 型から生じる lens space の Reidemeister torsion を求める
ことにより、Berge knot の表示に関する "斎藤パラメータ" を得た。
これはすでに斎藤氏も得ていて、[ST] で用いられている。彼らと
の違いはそこからの計算だけにも見える。しかしパラメータを得る
過程もかなり違っている。斎藤氏の丁寧な geometric な解析は、
こちらで言うと、knot の meridian が Reidemeister torsion 中で
どう見えるか?を観察することに当たる。これ以降の議論では、
Franz lemma が重要である。
結果的に Alexander 多項式の段階で hyperbolicity を示していた。
つまり 7, 8 型の Berge knot の Alexander 多項式は、torus knot
や satellite knot のそれらではない。
「では Reidemeister torsion を求めるまでもなく、Alexander
多項式を比べるだけでよかったのでは?」
の疑問が生じそうだが、これは早計で、たとえ一般公式があって
も情報を適切に取り出すのは容易ではない。
7, 8 型の Berge knot に対する "山田の表示" において、その
パラメータで完全分類を与えていたことも指摘する。
生じる lens space(向きを無視して可)からも完全分類できる。
Alexander 多項式の段階で分類できているかは知らない。
lens surgery 係数のみから一意に特定できる場合とできない
場合があるのを、2 次体の数論を用いて示す。
7/19:久野 雄介 氏(広島大学) -Dehn ツイストの一般化について
単純閉曲線に沿う Dehn ツイストは、
曲面の写像類群の基本的な要素である。この講演では、
コンパクトで境界を一つ持つ曲面の上で、単純とは
限らない閉曲線に沿う「一般 Dehn ツイスト」を導入する。
この一般化は、曲面の基本群の完備群環の自己同型群の元として定義される。
この群は写像類群を自然に含んでいるので、
一般 Dehn ツイストが曲面の微分同相から誘導されるか否かを
問うことができる。この問いに関する二つの結果:
(1) 一般 Dehn ツイストの局所性、
(2) 一般 Dehn ツイストが微分同相から誘導されない様
な閉曲線の実例、を紹介する。
7/12:堤 康嘉 (大島商船高専) -Negativity of the Lescop invariants of the Brieskorn-Hamm
manifolds
We calculate the Lescop invariant of every Brieskorn-Hamm manifold
by Lescop's surgery formula. By the result, we show that every value is not
positive,
and give a recursive formula for a special case.
7/5:山田 裕一 氏(電気通信大学) -レンズ空間手術 から構成する4次元多様体
丹下基生氏(数理研)との共同研究です.
3次元球面内の Framed knot は, Dehn 手術とみなせば 3次元
多様体を, 2-ハンドルの接着とみなせば 4次元多様体を表します.
このことを利用して, 境界が同じ4次元多様体の組を作り,
それらを貼り合わせるとどんな多様体が得られるか,という問題
を考えます.
どんな knot に沿う Dehn 手術でレンズ空間が得られるか, の研究を
「レンズ空間手術」と言います. 上の問題で, 素材をレンズ空間手術
にした場合の族について話します.
6/28:村井紘子(奈良女子大学 理学部) -A Haken type theorem on intersections of essential
laminations and genus 2 Heegaard surfaces
(joint work in progress with Prof. Tsuyoshi Kobayashi)
Haken's Theorem shows that if a 3-manifold $M$ is reducible, then for any
Heegaard surface $P$ of $M$, there is an essential 2-sphere $S^2$ such that
the intersection of $S^2$ and $P$ is a circle.
Analogous results are given for the intersections of essential
surfaces with larger complexities and Heegaard sufaces by several authors.
In this talk, we will introduce a formulation for searching similar results
for the intersections of essential laminations and Heegaard surfaces,
and give a result for genus 2 Heegaard surfaces.
We will also give an example and explain the phenomena
which is typical for essential laminations, which are non-compact objects.
6/21:藤森 祥一(岡山大学) -3重周期的極小曲面の構成
3重周期的極小曲面はH.Schwarzによる鏡像の原理を用いた構成に始まり,
その後, A.Schoen、H.Karcherらによって多くの例が構成されてきた.
本講演では3重周期的極小曲面の新しい構成法を紹介したい.
本講演の内容はMatthias Weber氏(Indiana大学)との共同研究の成果による.
6/14:芦原 聡介(広島大学) -On biquandles and ch-diagrams
バイカンドルとはライデマイスター移動に対応する
いくつかの公理をみたす演算を持つ集合のことで, 曲面絡み目とは4次元空間
に埋め込まれた有向閉曲面のことである. バイカンドルは曲面絡み目に不変量
を与え, 任意の曲面絡み目はch-ダイアグラムという1次元のダイアグラムで
表されるということが知られている, この講演では曲面絡み目のバイカンドル
をその曲面を表すch-ダイグラムから直接求める方法について述べる。
6/7:張 娟姫 (広島大学) -Bridge presentations of links and meridian generators of link
groups
(joint work with Michel Boileau, University of Toulouse III)
Cappell and Shaneson asked in the Kirby's Problem List in Low-Dimensional
Topology whether the bridge number of a link and the minimal number of
meridian generators of its group coincide. Several partial answers have been
obtained by Boileau, Rost, Zieschang, Zimmermann and so on. We give another
partial answer to the Cappell-Shaneson's question. More precisely, we show
that the bridge number of an arborescent link is 3 if and only if the
minimal number of meridian generators of its group is 3.
5/31:Michel Boileau(University of Toulouse) -On commensurability classes of hyperbolic knot complements
We will discuss commensurability classes of hyperbolic knot complements. In
the generic case of knots without hidden symmetries we describe
the commensurability classes modulo the generalized Berge conjecture. In
this case we show that knot complements which are commensurable are
cyclically commensurable, and that there are at most $3$ hyperbolic knot
complements in such a commensurability class. Moreover if two hyperbolic
knots without hidden symmetries have commensurable complements, then they
are fibered with the same genus and chiral. Furthermore they have distinct
volumes.
This is a joint work with S. Boyer, R. Cebanu et G. Walsh.
5/24:橋永貴弘(広島大学) -Three-dimensional solsolitons and minimality of the
corresponding submanifolds
与えられたリー群が左不変 Einstein 計量や左不変 Ricci
soliton を許容するかどうかを調べることが目的である. 一方, リー群上の左不
変計量は, ある非コンパクト対称空間内の等質部分多様体と対応することが知ら
れている.
本講演では, 3次元単連結可解リー群上の左不変計量が solsoliton であること
と, 対応する等質部分多様体が自然な計量のもとで極小部分多様体であることが
同値となることを紹介する.
5/17:今別府孝規(広島大学) -On arrow polynomials of checkerboard colorable virtual links
仮想結び目は結び目の拡張であるが, 多くの点で古典結び目と
は異なる性質を持つ. しかしチェッカボード彩色可能なダイアグラムで表現され
る仮想結び目は古典結び目に近い性質があることが知られている. チェッカーボ
ード彩色可能な仮想結び目の不変量の性質をうまく利用することで, ある仮想結
び目がチェッカーボード彩色可能でないと判定することができる. 今回私は, 仮
想結び目のArrow polynomialの性質について調べた結果, Jones polynomial用い
た時よりも強い判定方法が得られたのでそれについて話す.
5/10:田丸 博士(広島大学) -Two-point homogeneous quandles
カンドルは結び目の研究において重要な働きをしている. 一方で, 対称空間はカ
ンドルであることが知られている. 我々の研究の目標は, 対称空間論で知られて
いる結果や手法を用いて, カンドルの構造を調べることである. 本講演では,
リーマン多様体に関する概念である two-point homogeneous space の類似物と
して, two-point homogeneous quandle を定義し, その性質を調べる. 特に, 元
の個数が少ない場合の分類結果を述べる.
4/26:安井 弘一(広島大学) -Cork twisting exotic Stein 4-manifolds
Xを任意の4次元2ハンドル体であってb_2>0をみたすものとし、
nを任意の自然数とする。本講演では、与えられた組(X,n)に対し、
次のような4次元多様体X'を構成するアルゴリズムを紹介する:
Xと「似て」いて、かつ、n個のエキゾチック微分構造を持つ。
また、この応用として4次元多様体間のエキゾチック埋め込みの構成にも触れたい。
なお本講演はSelman Akbulut氏との共同研究に基づく。
4/19:石部 正(広島大学) -対数的自由因子の補集合の基本群
齋藤恭司先生により導入された対数的自由因子の補集合の
位相はさまざまな観点から研究がなされてきた。本講演では
基本群について話す。ディスクリミナント因子は対数的自由因子
であることが示されている。有限鏡映群Wから構成する
ディスクリミナント因子の補集合の基本群は、Wと同じ有限
コクセター図形の表すアルティン群に表示される。他にも
有限複素鏡映群Wから構成するディスクリミナント因子の補集合
の基本群は、well-generatedなる条件を付ければアルティン群
の一般化のひとつであるガーサイド群に表示されることが
知られている。しかしながら、ガーサイド群に表示されない
にも関わらず、アルティン群と同様に中心の決定、語の問題の
解決、共役問題の解決、モノイドの増大度関数の決定
がなされている基本群がいくつか講演者により知られている。
それらの基本群のうちのひとつについて話す。
幹事:
作間 誠 E-MAIL :
sakuma@math.sci.hiroshima-u.ac.jp
田丸 博士 E-MAIL :
tamaru@math.sci.hiroshima-u.ac.jp
渋谷 一博 E-MAIL :
shibuya@hiroshima-u.ac.jp
安井 弘一 E-MAIL :
kyasui@hiroshima-u.ac.jp