講演内容:
正規分布を仮定した多変量線形回帰モデル (正規多変量線形回帰モデル) において,余分な説明変数を組み入れると予測精度が落ち,また妥当な説明変数が欠けてしまえば偏りが大きくなるため,その選択問題は非常に重要な問題であると言える. 正規多変量線形回帰モデルの変数選択問題においては,赤池情報量規準
(Akaike Information Criterion; AIC) に代表される情報量規準の最小化により変数を決定する方法が一般的である.しかしながら,標本数が小さい場合やパラメータが多い場合,さらには仮定した分布が真の分布と異なる場合において,無視できないバイアスが存在することも良く知られている.本発表では,一般的なAICのバイアス補正法を紹介し,バイアス補正AICを用いた変数選択法の特性を漸近的に明らかにし,また数値実験を行うことにより,バイアス補正が有効か否かということ調べる.
講演内容:
数多くある統計手法のうち, 最も実用されることの多いのが回帰分析(regression analysis)である.
卒業論文では, 回帰分析の理論, 特に, 重回帰モデルにおける最小2乗推定量の標本分布に関する研究を行った.
本発表では, まず・lえるモデルの設定をした後, 最小2乗推定及び最小2乗推定量が持つ性質について述べる.
また, 特性関数の一致性, レヴィの連続定理を既知としてリンドバーグの中心極限定理を示した後, 最小2乗推定量が満たす漸近的正規性について述べる.
講演内容:
卒業論文ではDonskerの定理という中心極限定理の関数空間への拡張を扱った.
Donskerの定理は確率過程によくあらわれるWiener測度の存在などに用いられる.
本発表では一般的な距離空間での測度の弱収束とDonskerの定理について扱う.
まず, 弱収束の一般的に知られている性質を述べ, 次に測度のtight性やrelative compact性と弱収束との関わりを述べる. 最後に, C空間でのDonskerの定理の証明を行う.
講演内容: 本発表では,多変量線形回帰モデルにおける高次元情報量規準を提案する. すなわち,説明変数および結果変数の次元が標本サイズよりも大きなデータ(高次元データ)に対する情報量規準を提案する. このような高次元データに対して,従来の情報量規準は最尤推定量の特異性から定義することが出来ない. そこで本発表では,共分散行列の逆行列(精度行列)にスパースネスを仮定し, Lasso型制約付き最尤推定量を代わりに用いる.その上で,提案する情報量規準の一致性,すなわち, 情報量規準を最小にする推定モデルが真のモデルに一致することを示す.
講演内容:
関節リウマチ(RA)とは自己免疫の異常により慢性的に炎症が起こり,関節痛や関節破壊を引き起こす疾患である。多くの合併症を伴い,そのうちの一つに心筋梗塞・脳卒中などCardiovascular Disease (CVD) がある.CVDが日常生 活の質に与える影響は甚大であるため,その高リスク患者には予防治療が必要である.欧米では高リスク患者を同定するために Framingham Risk Score などのリスク予測ツールが利用され ている.日本ではまだこの利用が一般的でなく,RA患者のCVDは疾患活動性が高くなると高率になるという報告があることから,東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターでは日本人RA患者のためのCVDリスク予測ツールを開発するという研究が開始された.
本研究では,予測モデルを評価するために近年頻用されている Net Reclassification Improvement (NRI) を利用した.NRIは結果変数が二値のモデル比較を目的として開発され,ある特定の時間までにイベントが起こったかどうかで二値化することで生存時間型変数に対応できるよう拡張された.その推定量としてKaplan-Meier推定量を利用したもの(KM-NRI)とInverse Probability of Censor Weightingを利用したもの(IPW-NRI)が提案されて いる.どちらの推定量も独立打ち切りの仮定が必要であり,本研究で利用するデータではその成立が疑わしい.よって既存推定量を改良したものを提案し,独立打ち切りの仮定が成立しないことの影響を現実的なシミュレーションで評価した.
KM-NRIは比較的独立打ち切りの仮定不成立に強いことがわかった.提案した改良推定量のバイアスは小さかったものの,比較的大きなサンプルサイズが必要であることがわかった.