広島モンテカルロ法・準モンテカルロ法セミナー アブストラクト 日時: 2015年2月9日(月) −2月10日(火) 場所: 広島大学理学部 (東広島キャンパス)B棟B707号室 ======================== 講演者:松本 眞(広島大学・理) タイトル: 準モンテカルロ法・超入門(Walsh figure of meritからの) アブストラクト:  モンテカルロ積分というのがあります。s変数実数値可積分関数 f(x_1,x_2,...,x_s): [0,1]^s -> R に対し, その積分値を求めたいとします。  [0,1]^sの中に一様ランダムに点をN個発生し、それらの 点でのfの値の平均を持って積分値の数値近似とするのがモンテカルロ積分です。 数値誤差(の二乗平均のルート)が(fの分散のルートかける)N^{-1/2}の オーダーで減りますが、誤差を100分の1にしたかったらNを10000倍増やさない とならないのって、つらくありませんか。  準モンテカルロ法では、N個からなる点集合Pを、たくみに選ぶことで、 誤差のオーダーをN^{-1}近くに減らします。fが従順な関数のときは、s=4くらいなら N^{-2}くらいに減ることもあることが、分かってきました。  どうやってPを選ぶとよいかは昔から盛んに研究されています。 最近、Josef Dick氏が導入・研究し、松本・斎藤・Matobaらが 計算しやすくしたWAFOM(Walsh figure of merit)を小さくする ようなPを選ぶというのが一つの方法です。WAFOMは符号理論にも近いです。  準モンテカルロ法というものを全く知らない人にも どんなものなのかわかるようにお話しするつもりです。 (でも、「超入門」は詐欺が多いので要注意ですね。)  講演者は、この講演の翌週に50才を迎える予定です。 この日の懇親会にだけ来るというかたも歓迎します。 ==================================== 講演者:柳原宏和(広島大学・理) タイトル:  正規累積確率を伴う統計手法と高次元セッティング アブストラクト: 統計手法において,未知パラメータの推定や検定に多変量正規分布の累積確率を計算する必要が あるものが多くある.本発表では,そのような統計手法,特に,多変量プロビットモデルの 未知パラメータ推定問題と変化係数モデルの仮説検定問題を紹介する. 多変量プロビットモデルでは,データの生起確率が多変量正規分布の分布関数で定義されており, 未知パラメータの推定にはその累積確率を計算する必要がある. また,変化係数モデルの仮説検定問題では,時間や位置に関する最大値が検定統計量となり, 最大値の分布の近似分位点を求めるために,多変量正規分布の累積確率を計算する必要がある. このような手法に,近年盛んに解析手法が提案されている高次元データに適用するためには, 非常に大きい変量での重積分を取り扱わなくてはならなくなる. 高次元データでなくとも,変化係数モデルの仮説検定問題においては, 近似精度をあげるために,やはり非常に大きい変量での重積分を取り扱わなくてはならなくなる. 以上のように,非常に大きい変量での重積分との関係も述べる. ==================================== 講演者:原瀬 晋(東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科/学振PD) タイトル:64ビット高性能線形擬似乱数発生法の開発 アブストラクト:  擬似乱数発生法は科学技術計算(特に、モンテカルロ法)の基本的な道具である。 32ビット整数出力の場合、松本-西村(1998)のMersenne Twister擬似乱数発生法 (MT法)が 有名である。64ビット整数出力については西村(2000)の64ビットMT法、斎藤-松本(2008) のSFMT法などが開発されている。実は、これらの発生法では、性能評価指標である vビット精度均等分布次元が必ずしも理論上の上限まで最適化されていない。 そこで、本研究では、vビット精度均等分布次元が最適化された64ビット整数出力の 線形擬似乱数発生法を開発する。  本研究は東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科修士2年の 木本貴光氏との共同研究である。 =============================== 講演者:鈴木航介(東大・数理・D2) タイトル:  重み付きWAFOMが最悪誤差を評価するような関数空間のtractability アブストラクト:  近年Matsumoto-Saito-Matobaにより, 数値積分法のひとつ,準モンテカルロ積分における点集合の良さを測る尺度WAFOM が定義された.WAFOMには,低WAFOM点集合の探索が容易であり, それらが実際に滑らかな被積分関数をよく積分することが観察されているなどの 特長がある.一方で,離散化を伴わない理論的な考察はほとんどなされていなかった.  本講演では,まずWAFOMを重み付きに拡張し, 重み付きWAFOMが最悪誤差を評価するような関数空間を与える. さらに,その関数空間における積分問題のtractabilityを明らかにする. Tractabilityとは,計算量が積分次元の関数として指数的よりも緩やかにしか 増加しないという性質である.ここでは,強いtractability, すなわち積分次元がいくら増大しても計算量が増大しないという条件, が成立することと,重みが適切に推移することが 同値であることを示す. 講演者:合田 隆(東大・工学・特任助教) タイトル:  重み付きWAFOMの小さなinterlaced polynomial lattice点集合の構成アルゴリズム アブストラクト:  Suzukiによって拡張された重み付きWAFOMはある関数空間の最悪誤差を表しており、 重み付きWAFOMが小さくなるような良いdigital netの存在が証明されている。 本講演では、そのようなdigital netを``構成するためのアルゴリズム''を与える。 具体的には、interlaced polynomial latticeと呼ばれる点集合のクラスを考え、 その中から重み付きWAFOMが小さくなる点集合を探索する決定的アルゴリズムと そのアルゴリズムによって探索された点集合に対する重み付きWAFOMの上界について議論する。 (Josef Dick氏(UNSW)、鈴木航介氏(東大数理)、芳木武仁氏(東大数理)との共同研究の成果です。) ===================================== 講演者:芳木武仁(東大・数理・D2) タイトル:  指数関数の Quasi-Monte Carlo 積分誤差による Walsh figure of merit(WAFOM)  の効率的近似 アブストラクト:  近年,滑らかな関数に対する Quasi-Monte Carlo 積分のための点集合 P の 良さを測る指標 Walsh figure of merit(WAFOM) が開発された. WAFOM(P) が小さな点集合 P は,滑らかな関数に対するQMC積分誤差が小さくなる. 与えられた P の WAFOM の値は,計算機を用いて容易に計算できるため, WAFOM の小さな点集合 P は計算機を用いたランダムサーチにより発見することができる. 本講演では, WAFOM をより簡単な指数関数の積分誤差で近似することにより, WAFOM の計算効率をさらに向上させる. この研究は,同研究科所属の大堀 龍一氏との共同研究である. ============================ 講演者:大堀龍一(東大・数理・M2) タイトル:  Efficient Quasi-Monte Carlo Integration by Adjusting the  Derivation-sensitivity Parameter of Walsh Figure of Merit アブストラクト We present an adjustment of the derivation-sensitivity parameter of Walsh figure of merit (WAFOM) for stochastic optimization of digital nets for quasi-Monte Carlo (QMC) integration. WAFOM is a quality measure for digital nets which is computed by a reasonable number of floating-point arithmetic operations. Its derivation-sensitivity parameter c determines the function space F_c in which the error-bounding inequality holds, which makes the choice of c important. In this thesis, we propose that we adjust c according to the dimensionality of the domain of integration and the number of samples, so that large coefficient of variation is assured for WAFOM values of randomly generated digital nets. This is based on the hypothesis that stochastic optimization is successful when the coefficient of variation is large. A merit of our proposal is that the adjustment is independent of the choice of optimization algorithms. The digital nets obtained by this adjustment with Harase's algorithm achieved higher order convergence, according to numerical experiments. ============================== 9日 10:30--11:30 モンテカルロ法・準モンテカルロ法に関する自由討論  13:00--14:30 松本 眞(広島大学・理)  準モンテカルロ法・超入門(Walsh figure of meritからの) 14:45--16:15 柳原宏和(広島大学・理)  TBA(統計にあらわれる高次元モンテカルロ法に関する話題) 16:30--18:00 原瀬 晋(東工大・イノベーションマネージメント・学振PD)  64ビット高性能線形擬似乱数発生法の開発 懇談会 18:45から西条駅近くの「満天」 10日 9:00--10:30 鈴木航介(東大・数理・D2)  重み付きWAFOMが最悪誤差を評価するような関数空間のtractability 10:45--12:15 合田 隆(東大・工学・特任助教)  重み付きWAFOMの小さなinterlaced polynomial lattice点集合の構成アルゴリズム 14:00--15:30 芳木武仁(東大・数理・D2)  指数関数の Quasi-Monte Carlo 積分誤差による Walsh figure of merit(WAFOM)  の効率的近似 15:45--17:15 大堀龍一(東大・数理・M2)  Efficient Quasi-Monte Carlo Integration by Adjusting the  Derivation-sensitivity Parameter of Walsh Figure of Merit 17:30-- 今後へ向けての討論