●●● 談話会 ●●●

2014年度

第10回

日時: 1月  13日(火) 13:00−14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階B707教室
講師: 古宇田 悠哉 氏 (広島大学理学研究科)
題目: 3 次元多様体の安定写像と分岐シャドーについて
Tea Time: 14:00−
要旨: 安定写像とは,Morse関数の一般化にあたる概念である. 2つの可微分多様体の次元の対がしかるべき範囲にあるとき,その多様体間には 安定写像がジェネリックに存在する.例えばターゲットの多様体の次元が 2のと き,安定写像はジェネリック存在する.本講演では,3 次元多様体から実平面へ の安定写像の特異ファイバーの数により,3次元多様体の特徴づけを行う. 任意の 3次元可微分多様体は,シャドーとよばれる 2 次元の多面体により 組み合わせ的に表示することができる.ここで,3次元多様体は,その多面体上 の「円盤束」の境界として構成される.シャドーはもともと 1990年代に Turaevにより定義され,量子不変量の研究に用いられていが,Costantinoと Thurstonは,2008年に出版された論文において,3次元多様体のシャドーと, その多様体が許容する安定写像の Stein 分解との間の関係を見出した. 彼らは安定写像の Stein分解を一部変形してシャドーとみなすことにより, 安定写像の特異ファイバーの(重み付き)総数を使って 3次元多様体の Gromovノルムの上からの評価を与えた. 本講演では,Costantinoと Thurstonによる Stein分解からのシャドーの構成と は逆に,シャドーによって表される 3次元多様体に対し,そのシャドーを Stein分解の一部とみなすことで,多様体の安定写像を構成する.帰結として, 3次元多様体が許容する安定写像の特異ファイバーの(重み付き)総数の最小数 と,シャドーの頂点の最小数が一致することが分かり,これによってこの数と 多様体のGromov ノルムが関連付られることを説明する.
本講演の内容は石川昌治氏(東北大学)との共同研究に基づく.

第9回

日時: 12月  9日(火) 13:00−14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階B707教室
講師: 田崎 博之 (筑波大学数理物質科学研究科)
題目: 複素旗多様体内の二つの実形の交叉
Tea Time: 14:00−
要旨:田中真紀子さんと共同で得たコンパクト型Hermite対称空間内の 二つの実形の交叉の対蹠性を利用して、 二つの実形に関するFloerホモロジーを入江博さん・酒井高司さんと 共同で求めた際の方法を複素旗多様体内の二つの実形の交叉の場合に 拡張することを目指しています。 コンパクト型Hermite対称空間がコンパクト半単純Lie群の随伴表現の 軌道になることに注目して、 二つの実形の交叉をより詳細に調べた田中さん・井川治さんとの共同研究と、 複素部分空間の系列から成る複素旗多様体内の実部分空間の系列から成る 実形と四元数部分空間の系列から成る実形同士の交叉を調べた 入江さん・酒井さんとの共同研究をもとに、 より一般の複素旗多様体内の二つの実形の交叉の一般化された対蹠性と、 交叉がある種のWeyl群の軌道になることを奥田隆幸さん・入江さん・ 井川さん・酒井さんと共同で証明しました。 この講演ではこの一連の研究の経緯と最後の研究成果について解説します。

第8回

日時: 12月  2日(火) 13:00−14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階B707教室
講師: 二宮 嘉行 氏 (九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)
題目: 識別不能性をもつモデルに対する統計理論
Tea Time: 14:00−
要旨:識別不能性をもつモデルは通常の統計的漸近理論を成立させない典型例の一つであり, 代わりとなる統計理論の開発は数理統計学における課題の一つとされている. 本講演ではその課題を概観するとともに,局所錐パラメトリゼーションに基づく解決策を紹介する. また,因子分析モデルのモデル選択問題を具体的に扱い, 識別不能性を無視したナイーブな手法より明らかに有効な手法が得られることを確認する.

第7回

日時: 11月  11日(火) 13:00−14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階B707教室
講師: 西尾 昌治 氏 (大阪市立大学理学研究科)
題目: 放物型 Bergman 空間について --- Carleson 測度と Toeplitz 作用素
Tea Time: 14:00−
要旨:関数空間として,単純に調和関数全体の集合といったものを考えると 大きすぎて取り扱いづらいことがよくあります。 そのとき,非負あるいは Dirichlet 積分有限といった条件で制限して得られる空間を考えることにより, 意味のある結果が引き出されることが期待されます。 ここでは,熱方程式やそれを少し一般化した放物型方程式を考察し, 解の条件として(2乗)可積分性を考えます。 するとそのようなもの全体は 再生核を持つ Hilbert 空間を成します。 講演ではまず,再生核による 積分作用素の有界性や放物型ベルグマン空間の基本的な性質について説明し, 次に,カルレソン測度の特徴付けやテープリッツ作用素について, その有界性やコンパクト性などを議論したいと思います。 また,調和 Bergman 空間についても少し触れる予定です。

第6回

日時: 11月  4日(火) 13:00−14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階B707教室
講師: David Sauzin 氏 (ピサ高等師範学校)
題目: Introduction to resurgence theory on the example of simple parabolic fixed points
Tea Time: 14:00−
要旨:The aim of this talk is to provide a survey of the basic notions of Ecalle's resurgence theory, using as an illustration the study of a holomorphic germ at the origin of C with a simple parabolic fixed point. Near such a fixed point, the local dynamics is classically described by means of pairs of attracting and repelling Fatou coordinates and the corresponding pairs of horn maps, of crucial importance for Ecalle- Voronin's classification result and the definition of the parabolic renormalization operator.
The strategy consists in constructing the Fatou coordinates from a formal series which is generically divergent but has a convergent formal Borel transform, whose analytic continuation can be described well enough so as to prove - Borel summability (analytic continuation in a sector with exponential bounds, so that one can perform Laplace transform) - and resurgence (analytic continuation along all the paths which avoid a certain lattice of singular points). Summability allows one to construct analytic solutions from the fomal one; the resurgent analysis allows one to describe the geometric consequences of the divergence of the formal solution.

第5回

日時: 10月  14日(火) 13:00−14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階B707教室
講師: 李 聖林 氏 (広島大学理学研究科)
題目: 非対称細胞分裂におけるパターン形成と自己組織化
Tea Time: 14:00−
要旨:たった一つの受精卵から始まった我々の体は 260 種類の様々な細胞によって 複雑な仕組みによって構成されている. このような細胞多様性の裏には, 母細胞 の非対称分裂によって種類の異なる 2 つの娘細胞を作り出す仕組みがある. 非 対称細胞分裂には複数の複雑な過程が関与しているが、分裂に先だって複数の 特定因子(蛋白質)が細胞膜又は細胞質で非対称に分布することが重要な過程 のひとつでよく知られている. しかし, 細胞の中で蛋白質の濃度の非対称性がど のような仕組みで作られるのかについてはよく分かっていない. この研究では, 線虫の初期胚やショウジョウバエの神経前駆細胞の非対称分裂 における分子生物学に基づいて、細胞膜と細胞質における過程を移流反応拡散 系によってモデル化し、細胞内のパターン形成の仕組みを議論する.

第4回

日時: 7月  15日(火) 13:00−14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階B707教室
講師: 宮地 秀樹 氏 (大阪大学理学研究科)
題目: タイヒミュラー空間の幾何学
Tea Time: 14:00−
要旨:タイヒミュラー空間とは標識付きリーマン面のモジュライ空間である. タイヒミュラー空間は函数論,微分幾何学など様々な分野からの 研究及び応用がある. そして,様々な分野の視点により変形を記述され変形具合を距離として表現される. この講演では函数論的視点から定義されたタイヒミュラー距離に関して 古典的結果と現在の結果について概観する.

第3回

日時: 7月  1日(火) 13:00−14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階B707教室
講師: 奥田 隆幸 氏 (広島大学理学研究科)
題目: Hopf 写像を用いた3次元球面上のデザインの構成
Tea Time: 14:00−
要旨:1977 年に Delsarte--Goethals--Seidel によって提唱された球面デザインの概念は, 大雑把に言うと, 球面をその有限部分集合で近似しようというものである. ここで球面の近似というのはどういう意味であろうか.
自然数 t に対して, 球面上に定義された任意の t 次以下の多項式関数 f について f の球面上の平均が f の X 上の平均と一致するとき, X は t-デザインであるという. つまり, t 次以下の多項式関数全体の集合において, 「球面上で平均をとる」という 操作を 「X 上で平均をとる」という操作に置き換えてよいということである. この意味で X は球面を近似していると考える. ここでのパラメータ t は謂わば X の球面近似の精度を表すものであり, t が大きければ大きいほど, 精度の高い近似であるといえる.
球面デザインの理論において一つの重要な問題は, 「大きな t について t-デザインを具体的に構成する手法を提示せよ」 というものである. t-デザインの存在証明は 1984年の段階で Seymour--Zaslavski によって 証明されていたが, 球面の次元が 2 以上の場合には具体的な構成は簡単ではない. 2 次元球面上の t-デザイン (t : large) の具体的な構成法は 2005 年に Kuperberg に よって与えられるまで知られていなかった.
球面の次元が 3 以上の場合にはこれまで具体的な t-デザインの構成法は知られていなかったが, 本講演では 3 次元球面の場合に t-デザインの具体的な構成法を得たことを報告する. 具体的には, 1次元球面上の 2t-デザインと, 2次元球面上の t-デザインが与えられているとき, Hopf fibration に沿ってそれらの積をとることで, 3次元球面上の 2t-デザインが 得られるという定理を紹介する. この定理の証明においては, 3次元球面, 2次元球面, 1次元球面の調和解析が Hopf fibration を通じてどのように対応するかという表現論的な問題が本質的である ことを付け加えておく.

第2回

日時: 6月  24日(火) 13:00−14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階B707教室
講師: 星 裕一郎氏(京都大学数理解析研究所)
題目: 数体の加法構造の単遠アーベル的復元
Tea Time: 14:00−
要旨:この講演では, 数体の乗法構造によるモノイド, その整数部分のなす部分モノイド, 各有限素点における主単数のなす部分群という情報から, その数体の加法構造(したがって, 体構造)を復元・記述する手続きについて, 議論したいと思います.

第1回

日時: 6月  3日(火) 13:00−14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階B707教室
講師: 橋永 貴弘 氏 (広島大学理学研究科)
題目: 部分多様体論を用いた左不変計量の研究
Tea Time: 14:00−
要旨:リー群上の左不変計量の成す空間に"スカラー倍を除いて等長的" という同 値関係をいれると, 各同値類はある(非コンパクト対称空間内の) 等質部分多様 体となることがわかる. 左不変計量がEinstein あるいは Ricci soliton で あるといった性質は"スカラー倍を除いて等長的"で保たれるため, 対応する部 分多様体(同値類) の性質とみなすことができる. 本講演では部分多様体論を用 いた左不変計量の研究の枠組み, およびこれまでに得られている結果について 紹介する.


2013年度以前