●●● 談話会 ●●●

2012年度

第1回

日時: 5月15日(火),13:00 - 14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
講師: 加藤 賢悟 氏 (広島大学大学院理学研究科)
題目: ノンパラメトリック操作変数モデルに対するベイズ法
Tea Time: 14:00 --
要旨:
 ノンパラメトリック操作変数 (NPIV) モデルに対するベイズ法の漸近的な性 質を紹介する。まず、NPIV モデルにおいて、構造関数を推定する問題は ill- posed な線形逆問題となることを指摘し、既存のアプローチを紹介する。後半 は構造関数に対するベイズ推定を議論する。

第2回

日時: 5月22日(火),13:00 - 14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
講師: 大下 承民 氏(岡山大学大学院自然科学研究科)
題目: NLS に対するコンパクト多様体上への集中
Tea Time: 14:00 -- 
要旨:
 k = 1, 2, · · · , K に対して,M_k を R^N 内の滑らかな q_k 次元コンパクト多様 体とする. M_k の近傍で代数的に減衰するポテンシャル V (x) をもつ全空間上の楕円型方程式 −ε^2 ∆u + V (x)u − u p = 0 を考察する. 適当な条件のもとで, ある 0 に収束する ε の列に対して, ∪_k M_k 上に集中する正値解が存在 するこ とを示す.証明には,べき乗ポテンシャルを もつ楕円型方程式の正値解の非退 化結果を用いる.

第3回

日時: 6月12日(火),13:00 - 14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
講師: 徳永浩雄氏 (首都大学東京理工学研究科)
題目: 楕円曲面の群構造を利用した平面曲線の構成とその応用について
Tea Time: 14:00 -- 
要旨:
 $a, b$は$4a^3 + 27b^2 ¥neq 0$を満たす有理数とする. 楕円曲線$y^2 = x^3 + ax + b$の有理数解全体に``無限遠点 $O$"を加えた 集合には可換群の構造が入ることは知られている.$a, b$を$1$変数の有理 函数体$K ={¥mathbf C}(t)$の元に置き換えて,$K$に値をとる解全体 $(x(t), y(t))$に対しても同様なことが云える.一方, $y^2 = x^3 + a(t)x + b(t)$は曲面であり,例えば,$(x(t), y(t))$を ``2倍"することは,曲面上の新たな曲線をあたえることを意味する.この 「演算をもちいて新たな曲線を作る」という手法がZariski 対などの平面 曲線の構成に応用できることを紹介したい.

第4回

日時: 7月3日(火),13:00 - 14:00
場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
講師: 森田茂之氏 (東京大学名誉教授)
題目: 低次元トポロジーのいくつかの謎
Tea Time: 14:00 -- 
要旨:
 3次元多様体論はごく最近急展開を見せて、4次元トポロジーの世界との際 立った性質の違いがますますはっきりとしてきた。講演の前半では、3、4両 次元にまたがるいくつかの謎について概観する。主役はホモロジー3球面のホ モロジー同境類全体のなす群の構造である。 後半では、これらの謎を念頭に、逆井卓也、鈴木正明両氏と進めている共同 研究の一端を紹介する。グラフおよびリーマン面のモジュライ空間の特性類に 関する、Kontsevich のグラフ・ホモロジー理論の観点からの研究である。時 間が許せば、予想している数論とのいくつかの深い関連についても言及したい。

第5回

日時: 10月30日(火),13:00 -- 14:00
場所: 大学院理学研究科 B707号室
講師: 矢ヶ崎一幸氏 (広島大学大学院理学研究科数学専攻)
題目: 可逆系における対称周期軌道の 1-パラメータ族からの分岐
Tea Time: 14:00 -- 
要旨:
 可逆系 (あるいは反転可能系,英語では reversible systems) と呼ばれる常 微分方程式系では,しばしば対称周期軌道の 1 パラメータ族が存在する.本講 演では,可逆系の対称周期軌道族からの分岐を取りあげ,分数調波軌道の発生 に対する単純な条件を与え,特異な分岐現象が起こることを明かにする.また, 一般化された Henon- Heiles 系に対する適用例を与える.

第6回

日時: 11月6日(火),13:00 -- 14:00
場所: 大学院理学研究科 B707号室
講師: 鎌田聖一氏 (広島大学大学院理学研究科数学専攻)
題目: カンドル代数と結び目理論
Tea Time: 14:00 -- 
要旨:
 カンドルは3つの条件(カンドル公理)を満たす2項演算を伴う集合である。 その条件は,結び目理論におけるライデマイスター変形と呼ばれる3つの基本 変形に対応している。カンドルにはその付随群と呼ばれる群が定義され,また ホモロジー群も定義される。これらは結び目の可逆性やカイラリティの問題に 有効に用いられている。本講演は,これらの基礎的概念について,どのように 登場したかに視点を置いて解説する。

第7回

日時: 11月13日(火),13:00 -- 14:00
場所: 大学院理学研究科 B707号室
講師: 川下美潮 氏 (広島大学大学院理学研究科数学専攻)
題目: 熱方程式に対する囲い込み法とレゾルベント
Tea Time: 14:00 -- 
要旨:
 「逆問題」と呼ばれる問題は私たちの日常に溢れています。その中に「ス ペクトル逆問題」、「散乱逆問題」、「境界値逆問題」など、微分方程式を用い て定式化できるものも多々あります。この講演では最初にこれらの逆問題がど のようなものかについて紹介します。 ここ数年、講演者は池畠優氏(群馬大 学・大学院工学研究科)と共同で熱方程式に対する境界値逆問題を「囲い込み 法」と呼ばれる再構成方法を用いて調べています。「囲い込み法」はもともと楕 円型境界値問題により定式化される境界値逆問題 (Calder?n の問題とも呼ばれ ています) について池畠氏が導入した方法です。その他にも池畠氏は「探針法」 と呼ばれる手法も提唱しています。最近これらの手法が熱方程式などの時間が 入った微分方程式に対する境界値逆問題についても取り入れられてきています。  この講演では、講演者も少し関わっている熱方程式についての境界値逆問題 における「囲い込み法」について、出来るだけ単純な例を用いてお話しする予 定です。最後にレゾルベント(パラメータ付き楕円型境界値問題の解を作用素 と見たもののこと)と熱方程式についての囲い込み法との関係について見えて きたことをご報告できればと思っています。

第8回

日時: 11月20日(火),13:00 -- 14:00
場所: 大学院理学研究科 B707号室
講師: 平之内俊郎 氏 (広島大学大学院理学研究科数学専攻)
題目: 代数的整数論に於ける種々の有限性について
Tea Time: 14:00 -- 
要旨:
  Pierre Deligne (68 才)は 2011 年 5 月 18 日付の Vladimir Drinfeld (58 才) への手紙(全 9 ページ)のなかで有限体上の多様体に於ける分岐を制 限した l 進層のある種の有限性を示した. 系として, 彼のいわゆる「Weil II」 (Weil 予想を証明した論文) に於ける予想 — l 進層と多様体の各点の幾何的 Frobenius で定まる特性多項式の係数で生成される体が有限次代数体となる — などが得られる. 証明のアイデアには, 最近の高次元(可換)類体論の発展 (2006 年以降)と, Lafforgue による(一次元)非可換類体論(2002 年)が用 いられている. 一方, 講演者も高次元(可換)類体論の進展をきっかけに分岐 を制限した代数的基本群を用いて類似の有限性を示していた. ここでは非可換 類体論のかわりに「Hermite-Minkowski の定理」と呼ばれる別の種類の有限 性定理が用いられる. 本講演では 19 世紀の「数の幾何」に端を発するこうし た代数的整数論に於ける種々の有限性を紹介する.

第9回

日時: 12月4日(火),13:00 -- 14:00
場所: 大学院理学研究科 B707号室
講師: 黒田茂氏 (首都大学東京大学院理工学研究科数理情報科学専攻)
題目: 多項式環、侮るべからず
Tea Time: 14:00 -- 
要旨:
 多項式環は誰でも知っている素朴な対象です。このようなものから、 一体どんな面白い数学が展開されるのか、と思われるかもしれません。 しかし、多項式環は非常に奥が深く、基本的なことさえ実はほとんど分かっていないのです。 この講演では、始めに多項式環に関するいくつかの重要な問題を紹介します。 その後で、最近大きく進展している多項式環の自己同型群の研究についてお話しします。

2011年度以前