2011年度
第1回 (印刷用はこちら)
- 日時: 5月10日(火),13:00 - 14:00
- 場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
- 講師: 藤田 岳彦 氏 (中央大学理工学部経営システム工学科)
- 題目: リーマンゼータ関数と確率論
- Tea Time: 14:00 --
- 要旨:
- リーマンゼータ関数の特殊値
(特にバーゼル問題 ζ(2)=π2/6)
を初等確率論の手法で求める.
2 つの独立なコーシー分布の商,逆正弦分布の商,
指数分布の商, ウィグナー半円分布の商のすべてで
バーゼル問題,リーマンゼータ関数に関する
オイラー公式が導き出せる.
また,ルジャンドル展開の手法でも
バーゼル問題が解けることや,
関連話題についても論じる.
予備知識は大学 1,2 年程度の微分積分,
初等確率論(講演時に復習する.)で十分である.
第2回 (印刷用はこちら)
- 日時: 5月18日(水),16:20 - 17:50 (いつもと曜日・時間が異なります)
- 場所: 広島大学理学部E棟2階 E210教室 (いつもと場所が異なります)
- 講師: 坂上 貴之 氏 (北海道大学大学院理学研究院)
- 題目: 多重連結領域の点渦力学
- Tea Time: 15:30 -- (理学部 B708にて)
- 要旨:
- 二次元空間内の中に多くの島や障害物が
存在するような多重連結領域を考え,その中の
非粘性・非圧縮流体の運動について調べる.
このような流れの研究は数学的に
面白い問題であるのは勿論であるが,
応用上も重要である.
例えば湖沼・港湾・河川などの砂州や島を含む流れや,
風力発電プロペラのデザイン,
ヨットレースやスキージャンプなどといった
流体中に物体が相互作用するようなものなど,
様々な方面における数理流体モデルとして
利用できる可能性がある.
本講演では,特に多重連結領域における点渦の力学
について解説する.Kelvin の循環定理より二次元における
渦度は保存量であり,あたかも実在する質点のように運動
するため,渦の運動に着目することで流体運動の様子が
はっきりしてくる.点渦力学を標準多重連結領域において
構築し,それを等角写像と組み合わせて幅広い形状を持つ
多重連結領域でこうした問題を考えることができることを
例とともに示す予定である.
第3回 (印刷用はこちら)
- 日時: 6月14日(火),13:00 - 14:00
- 場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
- 講師: 安井 弘一 氏 (広島大学大学院理学研究科)
- 題目: 4 次元多様体のコルクとその応用
- Tea Time: 14:00 --
- 要旨:
- 90 年代後半の Curtis-Freedman-Hsiang-Stong らの研究により,
単連結閉 4 次元多様体の全てのエキゾチック微分構造は,
元の多様体から可縮な部分多様体を取り除いて貼り直すことで得られることがわかっ
ている.
そのような部分多様体はコルクと呼ばれているが,微分構造とコルクの対応はよくわ
かっていない.
講演では,4 次元多様体のコルクの色々な具体例の構成や,コルクを応用して
エキゾチックな境界付き 4 次元多様体を構成する方法などについて紹介する.
なお,本講演は Akbulut 氏(ミシガン州立大)との共同研究に基づいている.
第4回 (印刷用はこちら)
- 日時: 6月28日(火),13:00 - 14:00
- 場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
- 講師: 竹井 義次 氏 (京都大学数理解析研究所)
- 題目: 微分方程式に対する parametric Stokes phenomena について
- Tea Time: 14:00 --
- 要旨:
- 微分方程式に対する「Stokes 現象」とは,
真の解と漸近解(形式解)の対応が
不連続に変化する現象を指す.
典型的な例は常微分方程式の
不確定特異点における Stokes 現象であり,
この場合は独立変数が不確定特異点に
近づく方向の変化に伴って
真の解と漸近解の対応に不連続な飛びが現れる.
さらに,微分方程式が漸近パラメータを
含んでいる場合には,パラメータの変化に伴って
ある種の Stokes 現象が起こる.
こうした Stokes 現象は
``parametric Stokes phenomena" と呼ばれ,
上述の不確定特異点における Stokes 現象とも
密接な関連をもっている.
本講演では,Weber 方程式等の
古典的な方程式を題材に用いながら,
岩木耕平君(京大数理研,D1)により最近見出された
Painlevé 方程式に対する場合も含め,
パラメータの変化に伴って起こるこうした
parametric Stokes phenomena について解説する.
第5回 (印刷用はこちら)
- 日時: 7月5日(火),13:00 - 14:00
- 場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
- 講師: 飯間 信 氏 (広島大学大学院理学研究科)
- 題目: はばたき飛翔における動的渦構造
- Tea Time: 14:00 --
- 要旨:
- 昆虫飛翔にみられるような
中レイノルズ数におけるはばたき飛翔では,
翼から剥離した渦とその動力学が
揚力生成に大きな役割を果たす.
このような動的な渦構造と昆虫飛翔に関わる
最近の話題についてお話する.
第6回 (印刷用はこちら)
- 日時: 7月27日(水),12:50 - 14:20 (いつもと曜日・時間が異なります)
- 場所: 広島大学理学部E棟 E002号室 (いつもと場所が異なります)
- 講師: 藤本 仰一 氏 (大阪大学大学院理学研究科)
- 題目: 数理で見る細胞レベルの生命現象
- 要旨:
- 生命活動を維持進行するために,
遺伝子発現レベルの時間的および空間的な変動は,
多種の分子によって制御されている.
一細胞レベルの遺伝子発現の計測技術や
合成生物学などの構成的な手法が発達し,
少数の遺伝子で作られるネットワークの働きを
定量的に調べることが出来るようになった.
その結果,数理的な解析と実験的検証が
より密接に結びついた研究が進展しつつある.
このセミナーでは,遺伝子発現のスイッチ,
遺伝子発現の時間的な振動と細胞間での同期,
動物の体節形成,植物の葉の配置(葉序)の決定,
などを例にして,どのように数理と実験が
結びついているかについて現状を解説する.
このような研究から,発生過程などの
さらに複雑な生命現象,および,数理の両面について,
理解がどのように進みうるかを議論したい.
第7回 (印刷用はこちら)
- 日時: 11月1日(火),13:00 - 14:00
- 場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
- 講師: 戸田 幸伸 氏 (東京大学数物連携宇宙研究機構)
- 題目: Donaldson-Thomas 不変量と生成関数
- Tea Time: 14:00 --
- 要旨:
- Donaldson-Thomas(DT)不変量は
3次元Calabi-Yau多様体上の安定層の
数え上げ不変量であり、
階数が1のDT不変量はGromov-Witten不変量と
生成関数のレベルで等価であることが
Maulik-Nekrasov-Okounkov-Pandharipande
によって予想されている。
また近年、Kontsevich-Soibelman、Joyce-Songらによって
DT不変量の壁越え公式が確立され、
様々な応用が得られている。
本講演ではこれらDT 理論の近年の発展について解説する。
第8回 (印刷用はこちら)
- 日時: 11月15日(火),13:00 - 14:00
- 場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
- 講師: 加茂 憲一 氏 (札幌医科大学)
- 題目: ポアソン回帰モデルを用いた癌リスクの視覚化
- Tea Time: 14:00 --
- 要旨:
- 癌は重篤性が高い上に
社会的な経済損失も多大な疾病であり、
国レベルでの対策が急務とされている。
癌は様々な要因が複雑に絡み合って
発症すると考えられているが、
本研究では特に時間に依存する癌リスクの性質に着目し、
それを視覚的に表現する手法について紹介する。
具体的には、癌リスクが、年齢と出生年により説明される
というポアソン回帰モデルを用いて理論を展開する。
結果の出力としては、
年齢と出生年を座標とする平面上に、
リスクの高低を曲面として表現する。
視覚化は人間にとってデータを直感的に捉えられる
効果的な手法であり、特に解析の初期段階において
重要な役割を果たすことが期待される。
このような手法により明らかになった特性は、
2次的な解析に適用することが可能となる。
その一例として、将来予測を行った結果についても
紹介する予定である。
第9回 (印刷用はこちら)
- 日時: 12月20日(火),13:00 - 14:00
- 場所: 広島大学理学部E棟2階 E210教室 (いつもと場所が異なります)
- 講師: 溝口 紀子 氏 (東京学芸大学教育学部)
- 題目: 非線形拡散方程式の爆発解について
- Tea Time: 14:00 -- (理学部 B708にて)
- 要旨:
- べき乗の非線形項をもつ半線形拡散方程式の
有限時間で爆発する解の挙動について述べる。
この方程式の爆発解のふるまいは非線形項のべきが
Sobolev の臨界指数の前後で劇的に変化する。
最近、Sobolev の意味で超臨界の場合に、
爆発した後も弱解の意味では延長できる不完全爆発や、
爆発の速さに関して typeII と分類される爆発など
興味深い現象が現れることが分かってきたので、
それらについて解説する。
第10回 (印刷用はこちら)
- 日時: 1月24日(火),13:00 - 14:00
- 場所: 広島大学理学部B棟7階 B707教室
- 講師: 石田 政司 氏 (上智大学理工学部)
- 題目: Li-Yau-Perelman 微分ハルナック不等式の幾何
- Tea Time: 14:00 --
- 要旨:
- 楕円型または放物型偏微分方程式の解に対し,異なる 2 点においてその値を比較
する不等式をハルナック不等式と呼ぶ.1986 年,Li と Yau は多様体上の熱方程式
の解に対し新しい不等式を証明し,それを積分することでハルナック不等式を導
いた.そのため,その不等式は Li-Yau 微分ハルナック不等式と呼ばれている.
一方,ポアンカレ予想の解決の際に Perelman は,W-エントロピーと呼ばれる汎関
数を導入し,Ricci flow に対し驚くべき応用を与えた.その副産物の 1 つとし
て,Ricci flow に付随する共役熱方程式の解に対し,Li-Yau 微分ハルナック不等式の
ある種の一般化を導いた.また,Perelman の仕事
以降,Renormalization group flow,Ricci Yang-Mills flow など,Ricci flow の拡張版が考察され,それらに対する Perelman 理論の構築が試みられている.
本講演では,以上を概観した後,特に Ricci flow と調和写像流を
組み合わせた Ricci flow の拡張版を取り上げる.その flow に自然に付随すると考えられる共役
熱方程式を導入し,その解に対して Li-Yau-Perelman 型微分ハルナック不等式が
成立することをお話する予定である.
2010年度以前
Date: 2012.1.13
談話会委員 井上, 大西, 平之内, 松本
大学院理学研究科数学専攻