1次分数変換の群 はポアンカレ計量に関する 等長変換群として複素上半平面 Im に作用し,その部分群であるモジュラー群 の作 用による商空間 はモジュラー曲面と呼ばれています.モ ジュラー曲面は,分岐点をもつことを許した意味でリーマン面になっています.モジュ ラー曲面上の測地流の閉軌道,モジュラー群の双曲元,上半平面の境界の点としての 実2次体の無理数とは以下のような関係で結ばれています.
(1) 上の測地流の閉軌道と の原始的双曲元の共役類は1対1に 対応する.
(2) が実2次体の無理数であるための必要十分条件は,それが の 原始双曲元の固定点になることである.
(3) 上の測地流の閉軌道 の周期=一周分の双曲的長さ は,対応する原始双曲元をトーラスの自己同型とみなしたときの不安定多様体方向の 拡大率 をもちいて で与えられる.
さらに次の素数定理の類似が成り立つことが興味深いことであると思います.
前者の場合には素数定理の類似が上で書いたのと全く同じ形で成り立つことがすでに 知られています.後者については15年ほど前にいろいろな人が予想をたてて,様々 な試みをしたのですが未だにこれだという結果は得られていないようです.ここでは, 区間入替え変換の空間をリーマン面上の正則 形式,測度付き葉層構造と結び付 けて,その上の Rauzy induction =力学系の一種を考えるという講演者自身の方法 による部分的な結果を紹介して見たいと思います.