で有理数体を表し、
で代数的数の体
(一変数有理数係数多項式の解となる数の全体)を表します。
の体としての自己同型群を「
の絶対ガロア群」
といい、
で表します。
を、 上定義された幾何的連結な代数多様体 とします。これは、有理数係数の連立多変数多項式 を、複素数範囲で解いた解図形と考えて差し支えありません。
は位相空間なのでその基本群が定まります。 Grothendieckの理論により、 は基本群の profinite completionと呼ばれる完備化に作用することが わかります。
この作用は多くの情報を持ち、しばしばそのものが この作用から回復されることが示されています (Grothendieckの遠アーベル哲学、証明は玉川 望月ら)。
一方Deligneは、「基本群のpro-完備化 へのガロア 作用は、コホモロジー的なもの(=``motivic'')であろう」と 予想し、その予想からガロア作用について基本的な予想を 立てました。その予想は、伊原が独立に研究していた 枠組においては次のように述べられます。
伊原は、として をとり、 の降中心列を引き戻して にフィルトレーションを入れました。Deligneの予想を この枠組で述べると、 「このフィルトレーションに付随するgraded Lie代数 の生成元として、3以上の奇数次グレードに一個ずつの元が とれるであろう(生成)」と述べられます。 また、同時に発せられたDeligneの質問は、 「さらに、これらの生成元は自由生成元なのではないか」 というものです。
1999年に生成の予想を「重みつきマルセフ完備化」という
手法で証明したので、それについて説明します
(R. Hainとの共同研究)。これは、ガロア群をベキ単行列群
で近似する手法で、証明は``motive''の哲学にそったものです。