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散乱理論における弾性表面波 



川下 美潮(茨城大学教育学部)




地震波などの弾性体を伝わる波は内部を伝わる波以外に弾性表面波(Rayleigh波) と呼ばれている特殊な波がある。この波は弾性体の境界面を伝わっていると考えら れ、弾性波に特有のものである。  これらの弾性波が伝わる法則は弾性方程式で記述される。この方程式は2階の双曲 型方程式系の物理的な背景を持っている重要な実例である。通常のスカラー値波動方 程式の場合と同様、弾性方程式の外部境界値問題に対してもLax-Phillips式散乱理論 を展開できる。Lax-Phillips式散乱理論はHuygensの原理や解のエネルギーなど双曲 型方程式系の解が持つ性質から自然に現れる概念を用いて展開されている。特に通常 の波動方程式の外部境界値問題については散乱理論から派生した様々な問題について 多くの深い研究が行われている。これらの研究は、大雑把にいえば、波長の短い波 (高周波)が境界に拘束されるという現象が解の性質に与える影響について調べてい るといえる。 弾性方程式の外部境界値問題においては一般には先に述べたように境界を伝わる表 面波が存在する。この表面波に対応する高周波を考えると、それはいつまでも境界上 にありつづける、即ち境界によって拘束されていることが予想される。そこでこれま での波動方程式に対する研究との比較を通じて表面波の拘束現象について明らかにす ることが問題になる。  この講演ではこの問題に関する現状を報告する。さらに表面波に関する理解をより 深めるために最近考えていることについても触れたいと思う。





Tohru Okuzono
2001-07-26