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対称マルコフ半群のスペクトル半径の Lp-独立性

東北大理        竹田 雅好                


${\bf M}=(\Omega,X_t,P_x,\zeta)$ を 局所コンパクト可分距離空間 X 上の m-対称なマル コフ過程とする. ここで, $\zeta$${\bf M}$ の生存時間, m は台が X となる正のラドン測度とする. $\{p_t\}_{t\geq 0}$ $\{R_{\alpha}\}_{\alpha>0}$ をそれぞれ ${\bf M}$ の作る半群とリゾル ベントとする. すなわち, ptf(x)=Ex(f(Xt)), $R_{\alpha}f(x)=E_x(\int_0^{\infty}e^{-\alpha t}f(X_t)dt)$. そこで, 対称マルコフ過程 ${\bf M}$ に対して次の4つの仮定を置く.


I. (既約性) ボレル集合 Apt-不変, すなわち, 任意の $f\in L^2(X;m)\cap{\mathcal B}_b(X)$t>0 に対して, pt(IAf)(x)=IAptf(x) m-a.e. が成り立つならば, Am(A)=0 か $m(X\setminus A)=0$ を満たす. ここに, ${\mathcal B}_b(X)$ は 有界ボレル関数の空間.

II. ${\bf M}$ の推移確率 pt(x,dy) は m に関して絶対連続, pt(x,dy)=pt(x,y)m(dy).

III. $p_t(C_{\infty}(X))\subset C_{\infty}(X)$. ここに, $C_{\infty}(X)$は無限遠点で零となる連続関数の空間.

IV. $R_11(x)\in C_{\infty}(X)$.


以上の仮定の下, Donsker-Varadhan 型の大偏差原理を用いて, 生存時間 $\zeta$ に関する次の公式が示せる:


\begin{displaymath}\lim_{t\to\infty}{1\over t}\log \sup_{x\in X} P_x(t<\zeta)
=-...
...{{\mathcal E}(u,u):
u\in{\mathcal F},\ \int_Xu^2dm=1\right\}.
\end{displaymath} (1)

ここに, $({\mathcal E},{\mathcal F})$${\bf M}$ の生成するディリクレ形式と呼ばれるもの である. いま,半群 ptf(x) の Lp(X;m) 空間上の 作用素としてのスペクトル半径を $\lambda_p$で表わす:

\begin{displaymath}\lambda_p=-\lim_{t\to\infty}{1\over t}\log\Vert p_t\Vert _{p,p},
\quad 1\leq p\leq\infty.
\end{displaymath}

その時, (1) は $\lambda_{\infty}=\lambda_2$ を意味し, 結果として $\lambda_p$p に依らないことがわかる.

ブラウン運動のあるクラスの時間変更過程に対しては, 仮定の I$\sim$ IV を満たすこと が示せ, その応用としてファインマンーカッツ汎関数の 可積分性について調べることができる.



 

Tohru Okuzono 平成11年10月18日