本多宣博 (広島大学理学部)
1999年6月15日
(M,g)を向きづけられた4次元リーマン多様体, Wをgのワイル共形曲率テンソルとする. Wが恒等的にゼロのとき, gは共形平坦とよばれる. 特にMが4次元のときは, Wは自然な分解 W=W++W-をもつが, W-が恒等的にゼロのとき, gは自己双対的であると言われる. 4次元球面上と複素射影空間上の標準的な計量は自己双対計量の 基本的な例である。
4次元可微分多様体M上に自己双対計量g が与えられると, twistor spaceとよばれる3次元複素多様体Zが自然に定まる. ZはM上の な-bundleの構造をもつ. (は複素射影直線を表す.) 逆に, このような 複素多様体で適当な条件を満たすものは, M上の自己双対計量を定める. この対応はPenrose対応とよばれ, 自己双対計量の微分幾何学的な性質の多くは twistor space の複素幾何学的な性質に翻訳される. 例えば, 自己双対計量に関する等長写像は対応する twistor space の 正則自己同型に対応する. twistor space上では代数曲面論や複素構造の変形理論など, 代数ないし複素幾何学的な手法を用いることができ, 特に自己双対計量の存在や一意性を示す際には強力な研究手段となる.
実際には, ほとんどのtwistor spaceは, 通常の代数幾何学の研究対象である射影的な(すなわち 複素射影空間に正則に埋め込める)多様体にはならず, 様々な病理的(だが興味深い)現象が起こる.
講演では, まずtwistor spaceのいくつかの例をあげ,
(2つの)コンパクトな自己双対多様体の連結和の上に
twistor space (すなわち自己双対計量)を構成する
Donaldson-Friedmanの理論
(これはtwistor spaceが最も有効に用いられた理論の一つである),
および(時間が許せば)筆者によるその一般化について取り上げたい.
S. K. Donaldson, R. Friedman, Nonlinearlity 2 (1989) 197-239.
C. LeBrun, Proc. Sympo. Pure Math., 62, Part 2 (1997)