談話会アブストラクト(10/20)
「種内托卵の存在性と様式に関する数理モデリングと数理モデル解析」
奈良女子大学大学院・人間文化研究科 瀬野裕美
種内托卵とは、同種生物集団内において、ある雌個体が産んだ卵を他の雌個体の世
話に托し、自らは全く世話をしない、という繁殖行動様式を指す。バンという鳥類を
はじめ、種内托卵行動が観察される生物集団においては、托卵行動を行う個体と全く
托卵行動を行わない個体がある割合で共存していることが知られている。本研究では
、第一に、生物集団内に托卵行動が(生物学的な意味を持って)安定に存在できるた
めの条件はいかなるものか、第二に、托卵行動が集団内で安定に存在する場合の、托
卵行動個体と非托卵行動個体の共存比率はどのように定まるものか、という2点を考
察するために、基本的な生物学的な仮定の下で托卵行動の適応性を(生物学における
適応度を)数理的に数理モデリングし、それによって構成される数理モデルの解析を
行う。本セミナーでは、その結果の生物学的な考察を主体とした講演を行うのではな
く、生物学的な考察を行うための数理モデリングをはじめとする、その数理的なプロ
セスや(数理生物学的な観点から要求される独特な)数理的解析の焦点を紹介し、数
理と生物現象の間の連関がこの生物学的問題についての数理モデリングとしてどのよ
うに成立させられうるものなのかについての議論を展開してみたい。
広島大学理学部数学教室談話会