種数 g の3次元ハンドル体とは,1 個の3次元球体に g 個の 1 ハンドル を接合して得られる向き付けられた 3次元多様体の事を言います. 以下では,略して Hg と書くことにします. Hg の写像類群(Hg 上の向きを保つ同相写像全体のなす群の, 恒等写像にイソトピックなもののなす正規部分群による 剰余群)は,3次元多様体の Heegaard 分解,リーマン面上の写像類群, 自由群上の自己同型写像等と関連した興味深い対象です.
この講演では,まず,閉曲面上の写像類群についての基本的な事柄と, Hg の写像類群の生成元について解説します.そのあと, Hg の写像類群の表示を求める方法について説明します. 群の表示を求める一つの方法としては,その群が非自明に作用する 単連結な空間を与え,その空間の問題となっている群による軌道空間の 「基本群」を計算するという方法がありますが, ここでは,Hg の写像類群の作用する単連結な空間を与えます. また,近年 Wajnryb によって,Hg の写像類群の 表示が与えらえれましたが,その時に用いられた空間についても 解説します.