日本数学会 中国・四国支部
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市民講演会

広中平祐「数学と世界」

約230名の参加者を得て、時間を越える熱心な質問・討論もあり、大変有意義な催しであった。
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■ 講演要旨

私は高校生のとき前田文友(当時、広島大学教授)の“数学は世界を映す鏡である”との言葉に感動した。数学には三つのお題目がある。それは「数」と「形」と「動」である。「数」の数学は、農作のための暦とか財務のための計算とかに関連して東洋にも西洋にも紀元前から芽生えがあった。「形」の数学も古代エジプトのピラミッドに象徴されるように古くから芽生えがあった。「数」の演算や公式などの研究から代数学が誕生し発展して今日に至る。数学の女王と呼ばれる数論に特徴的な“難と易”の表裏一体が高度情報化時代に重要な“鍵”の技術を提供している。「形」の研究は幾何学として、柔らかい幾何(質の研究)から硬い幾何(量の研究)まで様々に発展している。柔らかい幾何(トポロジー)の分野では我々人間や動物が動き回っている三次元が一番難しく一番面白い。三次元は、大きくて多様であり狭くて不自由である。我々の進化を生んだ空間が三次元なのは面白い。「動」が数学として確立したのは16世紀の微分積分の発見からで歴史的には新しいが他の学問分野への影響は急速に拡大して今日に至る。

私が得意とする分野は代数幾何だが、日常の“写真”対“デッサン”に対応して、数学に“方程式”と“変数(パラメータ)”がある。この両者の関係について、私のご自慢の研究成果がある。  広中 平祐

■ 講師紹介  広中平祐(ひろなか へいすけ)先生

数学者。文化勲章受章者(1975年)。日本で2人目のフィールズ賞受賞者(1970年)。京都大学数理解析研究所・ハーバード大学等日米の主要な研究機関で数学の研究活動を行う。山口大学学長も歴任。また、研究のみならず数学教育に積極的に取り組み、次世代の若者達に対する数理科学の振興・啓蒙・教育にも尽力。(財)数理科学振興会理事長。

■ フィールズ賞とは?

4年毎に開催される国際数学者会議において「顕著な業績をあげた40歳以下の若手数学者」に授与される数学界の最高の賞である。ノーベル賞に数学部門がないことからカナダの数学者J.C.フィールズの提唱により1936年に創設された。現在に至るまで45名が受賞。日本人数学者は3名が受賞。広中平祐先生の受賞理由は「代数多様体の特異点解消理論」である。

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