広島大学理学部数学科 代数数理グループ

2024年度の代数学セミナー

通常の講演時間はおよそ 1 時間半です。

今後の予定

1218(水) 1515 分   於 広島大学理学部 A 棟 A202 号室 (開始時間にご注意ください)
渡辺 業 氏(広島大学)
Wythoff Nim の変種のP-position に現れるフラクタル構造について
2 山の石取りゲームとして, 1 回の着手で(1) 片方の山から1 コ以上石を取る, (2) 両方の山から1 コ以上同じ数だけ石を取る, のどちらかを許したWythoff Nim というゲームが存在する. このWythoff Nim の正規形(着手出来なくなった方が負けというルール) のP-position(後手必勝局面) は黄金比の倍数の整数部分を用いて記述されることが知られている. (Wythoff,1907)

本講演ではWythoff Nim の変種として1 回の着手で(1’) 片方の山からa (≥ 1) コ以上石を取る, (2’) 両方の山から1 コ以上かつ取る石の数の差がc(≥ 0) 以内になるように石を取る, のどちらかを許した(a, 0, c)-YamaNim を考え, そのP-position が記号代入系を用いたフラクタルを利用して記述できることを紹介する. これは通常のWythoff Nim 及びFraenkel によるr-Wythoff Nim(ここでは(1, 0, r−1)-YamaNim) の結果(1982) の自然な拡張になっている.

例えば(2, 0, 0)-YamaNim の場合, x ≤ y を満たす正規形のP-positionを列挙すると(0, 0), (0, 1), (2, 4), (2, 5), (3, 7), (3, 8), (6, 12), (6,13), (9, 17),(9, 18),· · · となるが, そのx 座標に現れる数字の差分をとった列は(2, 1, 3, 3, 1, 1, 3, 1, 1, 3, 3,· · · ) となり, これは(2) → (2, 1), (1) → (3), (3)→ (3, 1, 1) という代入によって生成される2 から始まる不動点である列と一致する.

この講演では, 最初の15 分は英語によるスライドを利用した発表を行い, 残りの時間でその詳細について日本語による板書を利用した解説を行う.

なお本講演は木村俊一氏, 山下貴央氏(広島大学) との共同研究に基づく.

これまでの記録

1211(水) 1500 分   於 広島大学理学部 A 棟 A202 号室 (開始時間にご注意ください)
佐藤 宏平 氏(小山高専)
足利連分数と藤木・岡の特異点解消
複素2次元巡回商特異点に対する極小特異点解消から得られる例外因子と,付随するHirzebrch-Jung連分数の係数は順序を込めて対応する.この次元に関する拡張として,足利正氏が導入した高次元連分数があり,これにより藤木・岡のトーリック特異点解消が得られる.

本講演では,任意の3次元Gorenstein abelian商特異点に対し,射影的クレパントな藤木・岡のトーリック特異点解消が構成できることを説明する.

1120(水) 1435 分   於 広島大学理学部 A 棟 A202 号室
山下 貴央 氏(広島大学)
Triangular Nim の Wythoff バリエーションとその拡張
Yama Nim は発表者が修⼠論⽂で報告したゲームであり、 ⼀⽅の⼭から 2 個以上の⽯を取り、もう⼀⽅の⼭に 1 個戻す、という着⼿の 2 ⼭の⽯取りゲームである。TriangularNim は、Yama Nim の⾃然な拡張で、⼀⽅の⼭から 2 個以上の⽯を取り、全体として⽯が減るようにもう⼀⽅の⼭に少なくとも 1 個以上戻す、という着⼿の 2 ⼭の⽯取りゲームである。両者のゲームの必勝法は、2 つの⽯の個数の差が 1 個以下の時に良形になる。

本発表では、 まず Triangular Nim の Wythoff バリエーションの正規形の必勝法について説明を⾏う。このゲームは、 Triangular Nim の着⼿に加え、 𝑖と𝑗の制限の下で、プレイヤーが両⽅の⼭から⽯を取ることが許される、例えば 𝑖個の⽯を⼀⽅の⼭から、𝑗個の⽯をもう⼀⽅の⼭から取ることができる。𝑖 = 𝑗 > 0 としたとき、このゲームの局⾯(𝑥, 𝑦) の良形は、 𝑥 ≤ 𝑦 として、(𝑥, 𝑦) ∈ {(0, 0), (0, 1), (1, 3), (3, 6), (6, 10), (10, 15), . . . } すなわち、連続した三⾓数である。⼀般化したとき、(つまり、𝑖, 𝑗 > 0かつ|𝑖 = 𝑗| ≤ 𝑐 のとき、) 必勝局⾯が連続した(c+3)⾓数で記述できることも分かった。 その後、逆形のルールについても𝑐 = 0と𝑐 ≥ 1で異なる記述が得られたので、それについても報告する。

その他、 Triangular Nim を⼀般化したゲーム((𝑎, 𝑏)- Triangular Nim)の Wythoff バリエーションについて⾯⽩い結果が得られたので、それについても報告する。

1113(水) 1530 分   於 広島大学理学部 A 棟 A202 号室 (開始時間にご注意ください)
井上 博裕 氏(広島大学)
Ending Partizan Subtraction Nimについて
2人の対局者は同じ着手をできるが, 終了局面によって勝敗を決定するような組合せゲームはほとんど考えられてこなかった. 今回紹介する Ending Partizan Subtraction Nim は Nim における初めての例である.

Sは2以上の自然数の空でない部分集合とする. Left と Right と呼ばれる2人のプレイヤーが戦う次のようなゲームを考える: 1つの山に石がいくつかあり, Left と Right は交互に s ∈ S 個の石を取る. 最後に両者とも石が取れなくなったとき, 石が偶数個残っていれば Left の勝ち, 石が奇数個残っていれば Right の勝ちとする.

このゲームは奇数個残る・偶数個残るという2通りの終了局面によって勝利判定を行っているため, 一見どちらのプレイヤーも同じ程度に勝てると思われる. しかし, 様々な集合 S について調べてみると, なぜか Left のほうが圧倒的に勝ちやすいことが分かった. 本公演ではそのような現象が起こる理由を説明する定理を紹介する. 例えば, 石が n 個の局面で Right が必勝戦略を持てば, 石が n±1 個の局面では Left が必勝戦略を持つことを証明する. 一方多くの S で, ある個数以上では常に Left が必勝戦略を持つという状況が起こる.

109(水) 1500 分   於 広島大学理学部 A 棟 A202 号室
荻沼 弘実 氏、篠田 正人 氏(奈良女子大学)
新たなゲーム LinkStones の提案と基本的な性質
2人のプレイヤーが交互の手番で盤上に石を置いていく新たなゲームを導入する。このゲームでは、まず先手は盤上の好きなマス1つに石を置き、その後の手番で各プレイヤーはすでに石の置いてあるマスに隣接する空きマスをいくつか選んで同時に石を置く。自分の手番で石を置ける空きマスがなければ負けとなる。

本講演の前半では、このように定義したゲーム(LinkStones)を長方形の盤面で行うときの勝敗の考察について荻沼が述べ、後半ではこのゲームを一般のグラフ上で行うときの基本的な性質といくつかの具体例について篠田が述べる。

712(金) 1620 分   於 広島大学理学部 A 棟 A210 号室 (曜日・場所にご注意ください)
内海 和樹 氏(立命館大学)
The Mordell-Weil lattices of an Inose surface arising from isogenous elliptic curves
$II^∗$ 型特異ファイバーを 2 個持つ楕円 K3 曲面は猪瀬曲面と呼ばれる. 猪瀬曲面はある直積型 Kummer 曲面の 2 重被覆として構成できることが知られており,従って,2 個の楕円曲線から構成できる. 猪瀬曲面の Mordell-Weil 格子は一般には自明だが,付随する楕円曲線の間に同種写像が存在すれば,その同種写像に由来する因子が楕円曲面としての切断となり,Mordell-Weil 格子は非自明になる. この楕円曲線間の同種写像に由来する Mordell-Weil 格子の元を Weierstrass 方程式の有理点として記述するための方法と具体的な計算例を紹介する. 特に, Cayley-Bacharach の定理によって同種写像の次数に制限なく計算できる方法を確立できたので, これまで知られていなかった次数 5, 6 の場合の計算例を紹介する.

711(木) 1620 分   於 広島大学理学部 A 棟 A202 号室 (曜日・場所にご注意ください)
Ivan Cheltsov 氏(University of Edinburgh)
K-stability of pointless del Pezzo surfaces and pointless Fano threefolds
In this talk we will discuss K-stability of pointless del Pezzo surfaces and smooth Fano 3-folds defined over a non-algebraically closed field of characteristic zero. This is a joint work in progress with Takashi Kishimoto (Saitama), Hamid Abban (Nottingham) and Frederic Mangolte (Marseille).

73(水) 1620(時間が変更となりました)   於 広島大学理学部 A 棟 A201 号室
De-Qi Zhang 氏 (National University of Singapore)
Algebraic and Arithmetic Dynamics via Equivariant Minimal Model Program
We report our recent progress via the Equivariant Minimal Model Program (EMMP) towards the algebraic and arithmetic dynamics: Kawaguchi-Silverman conjecture (KSC) about the equality of dynamical degree and arithmetic degree of an endomorphism of a projective variety, and the Zariski Dense Orbit conjecture (ZDO) of an endomorphism.

626(水) 1620(時間が変更となりました)   於 広島大学理学部 A 棟 A201 号室
山内 卓也 氏 (東北大学)
代数体$K$上定義された代数多様体$X/K$の中間次数の法$p$エタールコホモロジー $H^d(X/\bar{K},{\bf Z}/p{\bf Z})$, $d={\rm dim}X$に付随するガロア表現について:${\rm Aut}_K(X)$が豊富な場合.
素数$p$, 代数体$K$上定義された(非特異射影的かつ幾何的連結な)代数多様体$X/K$, および整数$0\le i\le 2d,\ d={\rm dim}(X)$に対して, $i$次の法$p$エタールコホモロジー$V_{i,p}:=H^i(X/\bar{K},{\bf Z}/p{\bf Z})$を考えることができる ($V_{i,p}$は有限次元${\bf Z}/p{\bf Z}$ベクトル空間である). 空間$V_{i,p}$には 代数体$K$の絶対ガロア群$G_K$が${\bf Z}/p{\bf Z}$線形に作用し, ${\bf Z}/p{\bf Z}$線形表現 $\rho_{X,i,p}:G_K\longrightarrow {\rm Aut}_{{\bf Z}/p{\bf Z}}(V_{i,p})$ を得る. ガロア対応により, この表現の核に対応する$\bar{K}$の固定体$K_{\rho_{X,i,p}}$は は$X$の対称性をある意味で計っているといえる.

本講演では, Xとして, 楕円曲線, Dwork族などのCalabi-Yau超曲面(族)を考えた場合 $X$の自己同型群の情報を援用して, 固定体$K_{\rho_{X,i,p}}$の数論的情報を 如何に抽出することが可能であるか説明する.

本研究は部分的に独立して, Alex Ghitza (メルボルン大), 都築暢夫氏(東北大) との共同研究に基づくこと付記する.

209(金)1500 分  於 広島大学先端研 N 棟 404N 号室
Dino Festi 氏 (The University of Padua)
Black holes, rationalizability and modularity
Physicists interested in high energy physics often encounter Feynman integrals presenting square roots in their argument. Exact solutions of these integrals are normally out of reach and so they are usually solved numerically. In order to achieve higher precision in the numeric evaluationit is necessary to find a change of the variables of the integral that makes the square root disappear. Deciding the existence of such a change of variable is an algebraic problem that can be naturally translated into investigating the unirationality of a variety. The original problem can be generalized to sets of square roots and to algebraic extensions of function fields. We will finally present a case coming from the study of two black holes, treated also using modularity results.

The content of this talk is the fruit of a series of joint works with Marco Besier, Andreas Hochenegger, and Bert van Geemen.

112(金)1500 分  於 B702 号室
松澤 陽介 氏(大阪公立大学)
Preimages question of self-morphisms on projective varieties over number fields
Pulling back an invariant subvariety by a self-morphism on projective variety, you will get a tower of increasing closed subsets. Working over a number field, we expect that the set of rational points (of bounded degree) contained in this increasing subsets eventually stabilizes. I will explain why this expectation seems to be reasonable and introduce several affirmative cases, such as the case of etale morphisms and morphisms on the product of two P^1. I will also present some counterexamples that occur when we drop some of the assumptions.

This work is based on a joint work with Matt Satriano and Jason Bell, and recent work with Kaoru Sano.

106(金)1500 分  於 B702 号室
Pho Duc Tai 氏(VNU University of Science, Hanoi)
On the arithmetic of Edwards curves
In this talk we recall the history of elliptic curves in Weierstrass normal form, then we will explain the construction of the arithmetic (point addition and point doubling) on elliptic curves in Edwards normal form. Later we discuss the geometry of Edwards curves and applications.

929(金)1500 分  於 B702 号室
Davide Cesare Veniani 氏(Stuttgart University)
Non-degeneracy of Enriques surfaces
Enriques' original construction of Enriques surfaces dates back to 1896. It involves a 10-dimensional family of sextic surfaces in the projective space which are non-normal along the edges of a tetrahedron. The question whether all Enriques surfaces arise through Enriques' construction has remained open for more than a century.

In two joint works with G. Martin and G. Mezzedimi, we have now settled this question in all characteristics by studying particular configurations of genus one fibrations, and two invariants called maximal and minimal non-degeneracy. The proof involves so-called `triangle graphs' and the distinction between special and non-special 3- sequences of half-fibers.

In this talk, I will present the classification of Enriques surfaces of low non-degeneracy and explain how this classification solves this long- standing problem.

84(金)1500 分  於 B702 号室
Simon Brandhorst 氏(Saarland University)
K3 surfaces of zero entropy (Joint work with Giacomo Mezzedimi)
Automorphisms of K3 surfaces come in 3 flavors: 1) The orbit of every point is finite. 2) There exists a point with an infinite orbit, but no orbit is Zariski dense. 3) There is a Zariski dense orbit. In the first and second case the automorphism has zero topological entropy while in the last case it is of positive entropy. We say that a surface has zero entropy if every of its automorphisms has zero entropy.

In this talk we classify K3 surfaces of zero entropy yet with infinite automorphism group, equivalently, which have a unique elliptic fibration whose Jacobian has infinite Mordell-Weil group.

728(金)1500 分  於 B702 号室
山田 裕史 氏(岡山大学)
Virasoro代数とユニタリ群上のベクトル場
円周上のベクトル場のなす無限次元リー環はWitt代数と呼ばれる. その1次元中心拡大が表題のVirasoro代数である. 40年ほど前に脇本實氏と私は,そのFock表現について 特異ベクトルが特別なシューア函数として表示されることに気がついた. 長方形のヤング図形に対応するシューア函数である. なぜ長方形が登場するのかという疑問には,脇本ー山田のプレプリントが 出回った直後にN. Wallachが明確に答えてくれた. 回はこのWallachの仕事を大雑把に紹介したい.

710(月)1600 分  於 B701 号室
木谷 裕紀 氏(大阪公立大学)
手札消費型組合せゲームにおける勝敗判定アルゴリズム
将棋,囲碁などの偶然の要素を含まない完全情報ゲームを組合せゲームと呼ぶ.組合せゲームに対する理論計算機科学的興味の一つがお互いが最善手を続けた場合どちらが勝つかという判定問題における計算量である.本講演では,「手札を出し切ったプレイヤが勝ち」である手札消費型組合せゲームをいくつか取り上げ,それぞれのゲームに対する勝者判定アルゴリズムを紹介する.

710(月)1435 分  於 B701 号室
安福 智明 氏(国立情報学研究所)
不偏ゲームと代数の関係
組合せゲーム理論の分野において,不偏ゲームは古くから活発に研究されており,不偏ゲームのもつ代数的構造は興味深いものとして知られている.本講演では,不偏ゲームと代数との関係について,いくつかの具体的なゲームに触れながら紹介する.また,時間が許せば最新の研究成果についても紹介する.

77(金)1500 分  於 B702 号室
末續 鴻輝 氏(国立情報学研究所)
非不偏ゲームと全象ルール
本講演では、第一に組合せゲーム理論について簡単に説明し、次いで全象ルールに関する研究を紹介する。本研究で扱う全象ルールとは、正規形非不偏ゲームの(TransfiniteやLoopyではない)ルールセットであって、任意の「ゲームの値」を取ることができるものである。このようなルールはこれまで一つしか見つかっていなかったが、講演者の研究で新たに三つの全象ルールを発見した。それらの全象ルールと全象性の証明手法について本講演では紹介する。さらに時間が許せば、聴講者の興味に応じて講演者の過去の研究について紹介する。

623(金)1500 分  於 B702 号室
山下 貴央 氏(広島大学)
Yama Nim and a comply/constrain operator of combinatorial games
We introduce Yama Nim, a variation of Nim played on a two-dimensional semi-infinite game board, with terminal positions in the upper left corner. The player can move two or more up steps and one right step, or two or more left steps and one down step. If a player cannot move, they lose. We find the solution to this game. We also consider a comply/constrain operator on impartial rulesets. Applied to the rulesets A and B, on each turn the opponent proposes one of the rulesets and the current player complies, by playing a move in that ruleset. If the outcome table of the comply/constrain variation of A and B is the same as the outcome table of A, then we say that B is dominated by A. We show necessary and sufficient conditions of "A dominates B". Yama Nim is a good example that dominates classical rulesets such as Nim and Wythoff Nim.