広島大学理学部数学科 代数数理講座

2019年度の代数学セミナー

開催場所は広島大学理学部 B 棟 B701号室です。
通常の講演時間はおよそ 1 時間半です。

613(木)1620 分 於 B702 号室 いつもと曜日と時間と場所が違います。
長町 一平 氏(東京大学)
On homotopy exact sequences for normal algebraic stacks
連結幾何的生成ファイバー $X_{\overline{η}}$ を持つ連結正規局所ネータースキーム間の有限型全射 $f : X \to S$ について, 各エタール基本群のなす列 [[\pi_{1}(X_{\overline{\eta}},\ast)\to\pi_{1}(X,\ast)\to\pi_{1}(S,\ast)\to1]] を考える. 複素多様体の固有な沈め込み射の場合に (対応する位相基本群の) 列が完全になることの類似として, SGA1 では $f$ が固有平坦かつ幾何的被約ファイバーを持つ場合に完全性が示されている. 本講演では, この列が完全でない場合に $f$ が $S$ と双有理かつ同値でないスタックを経由することを示す. また, $f$ が平坦, または, $S$ が正則と仮定すると, $S$ の余次元 $1$ の点の条件のみで完全になることを示す. さらに $S$ が標数 $0$ の体上の双曲曲線のとき, 列の完全性がこれらの条件と必要十分であることを示す.
719(金)1620第2ターム中はいつもと時間が違います。
渡辺 業 氏(広島大学)
Collatz 予想の一般化の試み
1011(金)15
高橋 宣能 氏(広島大学)
代数多様体と連接層1
代数多様体と連接層についての速成コースです。
1018(金)15
高橋 宣能 氏(広島大学)
代数多様体と連接層2
代数多様体と連接層についての速成コースです。
1115(金)1620
梶浦 大起 氏(広島大学)
Association scheme上のdifference setとblock design
有限群で定義される組合せ論構造であるdifference setは,block designを構成するためのテクニックとして古くからよく研究されている。本講演では,difference setやassociation schemeの基本事項を紹介することからスタートし,difference setをassociation schemeと呼ばれる構造上に一般化した後,特にschurian schemeと呼ばれるassociation schemeのクラスでblock designとの関係を証明する。最後に,今回の話のメインである「schurian schemeと呼ばれるassociation schemeのクラスでblock designとの関係」について定義などを省略してステートメントだけ紹介する。

schurian scheme (X, G\(X×X), R)に対して,Xの部分集合Yについて次が成り立つ:
①Yが(X, G\(X×X), R)上のdifference setである,
②GYが2-designである。
1122(金)1620
小野 舞子 氏(岡山大学)
DG加群の持ち上げ問題について
本講演の内容は岡山大学の吉野雄二氏との共同研究に基づく。可換環上のホモロジー代数の予想であるAuslander-Reiten予想は、1975年に提起され、これまでに多くの研究がなされたものの、その解決の糸口すら定まっていなかった。私たちは、この予想を可換微分次数付き(DG)代数上の微分次数付き(DG)加群の持ち上げ問題に帰着するというアプローチ法を見出した。このプロジェクトは現在も進行中であるが、本講演ではこれまでに得られた持ち上げ問題の成果について紹介をする。特に、可換DG代数上の1変数”多項式”DG代数拡大に対して、DG加群の持ち上げ問題を取り扱う。この問題を解く鍵となったのは、J.Tateにより導入された作用素からヒントを得て、新たに導入したj-作用素である。j-作用素を用いて、持ち上げの障害類を構成した。ある弱い仮定の下で、DG加群の持ち上げ可能性をその障害類の消滅により特徴づけた。また持ち上げの一意性に対する十分条件も得られたので、これらの結果について紹介したい。
1129(金)15
星 裕一郎 氏(京都大学)
Hasse-Witt不変量が非零である次数が小さい正標数代数曲線の巡回被覆の存在
正標数代数的閉体上の射影的双曲的代数曲線に対して,そのHasse-Witt不変量は,基本的な不変量である.基礎体の標数をpと書くことにすると,次数がpの冪であるGalois被覆におけるHasse-Witt不変量の挙動は,Deuring-Shafarevichの公式によって完全に決定されるが,一方,次数がpの冪でないGalois被覆におけるHasse-Witt不変量の挙動は,一般に非常に複雑である.Raynaudは,自身によるテータ因子の理論を用いて,pと異なる充分大きい素数次数のnew-ordinary巡回被覆(特に,Hasse-Witt不変量が非零な巡回被覆)の存在を証明して,その系として,曲線の代数的基本群のpro-p Sylow部分群が非自明であるという定理を得た.この講演では,Raynaudによるこの仕事に関連した主張である,pが奇数(resp. 2)ならば,次数がp-1(resp. 3)の約数である巡回被覆であって,Hasse-Witt不変量が非零であるものが存在する,という主張についての議論を行う.
126(金)15
東山 和巳 氏(京都大学)
配置空間の対数充満点と対数因子
双曲的曲線$X$の配置空間とは,$X$の$n$個の直積から対角成分を除いた多様体$X_n$のことである.本講演では,$X_n$の幾何とモジュライ解釈(お絵かき)と$X_n$の基本群$\Pi_n$の関係を述べ,遠アーベル幾何学的な結果として,対数充満点(に対応する$\Pi_n$の部分群)が与えられているときに,その点を通る対数因子(に対応する$\Pi_n$の部分群)を復元する.
117(金)15
Benjamin Collas 氏(Universität Bayreuth)
Moduli spaces of curves, arithmetic and operads
Following Grothendieck, the moduli spaces of curves present at infinity some remarkable arithmetic-geometry properties, which in the '90s, led Y.~Ihara's school to develop a geometric study of the absolute Galois group of rational numbers in terms of braids and mapping class groups, tangential structures, and Grothendieck-Teichmüller theory. The goal of this talk is to present how the recent introduction of homotopical and operadic techniques, combine to the use of tangential structures in étale homotopy type, provide a fine arithmetic-geometry understanding in genus 0. We first present the seminal arithmetic-geometry invariants within GT theory (Ihara, Matsumoto et al.), then explain how the homotopy theory of little 2-disc operads closes the gap between GT and the geometric automorphisms (Fresse, Horel et al.), and finally how the introduction of tangential structures in operad close the gap between GT and Galois.