主催 | 広島大学理学部数学教室 |
共催 | 東広島市教育委員会 |
広島大学総合科学部数学教室 | |
後援 | 広島県教育委員会 |
広島市教育委員会 |
本公開講座は, 大学公開事業の一つとして平成 4 年度に始まり, 今回が 13 回目にあたります。 数学は, 創造性と自由な発想の下, 理論としての美しさをもつ学問として, 常に諸科学分野とも相互作用しながら発展し続けています。 数学の美しさを感じていただく機会を提供するために, 現在の数学研究の一端をわかりやすく紹介し, その面白さを理解していただこうとするものです。 今回も, 数学に関連する新しい題材を取り上げ, 4 名の講師陣による講義を企画しました。 さらに, 講義の他に, 「数学教室案内」, パネル展示「現代数学の世界」, 特別懇談会「高校教育と大学教育の接点」 (高校教員の方と大学教員の懇談) を開催します。
平成16年8月2日(月),8月3日(火)
広島大学理学部E棟1階 E102 講義室 (東広島市鏡山 1-3-1)
高校生(学年不問)及び数学に関心のある方
約100名
無料
「数のひとつの拡張 −合同方程式の極限として方程式 x2 + 1 = 0 を解く−」
都築 暢夫 氏整数,有理数,実数,複素数という数の範囲の拡張は, 小学校での算数から高等学校での数学の中で扱うことです。 整数から実数への拡張は, イメージとして, 直線上にとびとびにあった数を敷き詰めていくという感じです。[講師自己紹介]
整数・有理数から始まる数の拡張は, 実数・複素数への拡張だけでなく, それとは異なる拡張もあります。 その拡張では, 「整数の合同」という考え方を用い, その極限として定義します。 例えば, 2 を法として合同, 4 を法として合同, 8 を法として合同, … として, そのシステムを考える訳です。 ここで, 整数の合同とは, ある決められた整数で割った余りを考えるというものです。 この講義では整数の合同について解説して, 方程式
x2 + 1 = 0
を合同方程式とみて解いていき, その極限としてこの方程式を解きます。 この例をもとに, 実数・複素数とは異なる数の拡張について解説したいと思います。
都築 暢夫 (広島大学・大学院理学研究科 数学専攻・助教授)
整数係数の代数方程式やその合同方程式の解として定義される図形について研究する数論幾何学を専門にしています。
「化学反応のパターンとその数理」
山口 智彦 氏「渦巻く化学反応」として知られる BZ 反応を数理的な側面からお話します。 BZ 反応は酸化還元反応の一種ですが, 酸化が進む領域は青く, 還元が進む領域は赤く見えるので, 肉眼でも「どこで何がおこっているか」がわかります。 酸化還元反応は反応溶液中を波のように伝わり, さまざまな時空間パターンを形成します。 これらは反応拡散方程式や位相ダイナミクス, セルオートマトンやキネマティック理論などを用いて解析されています。 BZ 反応の中に生命現象との類似点を見出すこともできるでしょう。 なお, 講義ではデモ実験をおこなう予定です。[講師自己紹介]
山口 智彦 (産業技術総合研究所・ナノテクノロジー研究部門・ソフトナノシステムグループ長)
1956 年, 北海道の山の中で生まれました。 1979 年からつくばで研究しています。 化学と物理と生物と数理とナノテクノロジーとが交わるあたりに興味の対象があります。
「平面ビリヤードとその軌道の数理」
盛田 健彦 氏ここでいうビリヤードというのは, 幾何光学の法則に従う質点の運動を表していて, ゲームのビリヤードとは随分おもむきの異なったものを意味しています。 さて, 幾何光学といってしまうといかめしいですが, 光が波の性質をもっていることを考慮せず, 単に, 光線の束とみなして,[講師自己紹介]
(1) (直進性の法則) 一様な物質中では直進する;
(2) (反射の法則) 鏡にぶつかったときは入射角と反射角が等しいような反射をして運動を続ける;
(3) (屈折の法則) 屈折の仕方に関する法則(この話では使いません);
の 3 法則をもとに光の経路を論ずる数学的理論のことです。
今回は, 平面ビリヤードの軌道 (=幾何光学に従う質点の運動の経路) に関連した話題, とくに, 同じパターンをくり返す周期軌道について, 熱力学発展の歴史や, 最近の研究などにもふれながら, 話してみたいと思っています。
盛田 健彦 (広島大学・大学院理学研究科 数学専攻・教授)
私の専門は, エルゴード理論です。 様々な状態にある膨大な数の微小な粒子の運動から, 確率論的な法則にしたがって, 実際に観測される現象を説明しようとする熱学や分子運動論と, 非常に深く関わってきた分野です。
"MATHEMAGIC SERENDIPITY"
Caspar Schwabe (カスパー・シュワーベ) 氏Around the beginning of last century there were many finely crafted mathematical models used in academic teaching and research. Unfortunately most have disappeared since. "Mathemagic Serendipity" is a demonstration of new flexing mathematical models invented by scholars from all over the world. The performance of these shape-changing kinetic models is a "romance of many dimensions," a reference to the famous last century novel "Flatland" by Edwin Abbott(注). In the course of unfolding them into three-spaces, they unveil interesting kinematic phenomena like translation and rotation, explosion and implosion, inversion and gastrulation, jitterbugging and tensegrity, knots and loops and Moebius strips.[講師自己紹介]
20 世紀初頭の頃, 大学教育や研究の場で多くの精巧な数学の「模型」が使われていました。 ところが残念なことに, その後それらのほとんどは失われてしまったのです。 「Mathemagic Serendipity」は, 世界中のいろいろな科学者によって発明された新しい変形自在な数学模型の集大成です。 これらの動的に変化する模型たちによって生み出されるパフォーマンスは, 20 世紀の有名な小説「平面国 (Flatland)」 (エドウィン・アボット著)(注)にも出てくる「多次元のロマンス」とでも呼ぶべきものです。 それを 3 次元の空間に展開して見てみれば, 平行移動と回転, 爆発と圧縮, 反転と陥入, ジッターバグとテンセグリティー, 結び目とループとメビウスの帯といった, さまざまな興味深い動的な現象に出会うことができるでしょう。
(注) この本の翻訳が『多次元★平面国 − ペチャンコ世界の住人たち』 (石崎阿砂子・江頭満壽子共訳,東京出版,1992 年) というタイトルで出版されています。
Caspar Schwabe (カスパー・シュワーベ) (倉敷芸術科学大学・芸術学部 工芸デザイン学科・教授)
Born in 1953, in Zurich, Switzerland. Designer of interactive objects and geometrical installations, and author of cultural exhibitions. Member of ISIS Symmetry, the International Society for the Interdisciplinary Study of Symmetry. Lives since two years ago in Japan.
私は 1953 年にスイスのチューリッヒで生まれました。 数学や物理現象の分野における, 対話式オブジェや幾何学オブジェの作品デザイナーおよび制作をしています。 文化的な展示の展示企画デザイナーとしても仕事をしてきました。 ISIS Symmetry (対称性に関する学際的研究を行う国際学会) のメンバーです。 2 年前から日本に住んでいます。 今回は日本語で講演をします。
1日目講義終了後,次の二つの企画を並行して行います。●「数学教室案内」 : 数学教室の図書室,コンピュータ室等の見学ツアー
● 特別懇談会 「高校教育と大学教育の接点」
教員の方を対象とした高校教育と大学教育の情報交換のための懇談
(特別懇談会に参加ご希望の方は, 申込書の参加希望調査欄に記入してください。)
また,E棟1階 E104 講義室 (E102 講義室の斜め向かい) にて● パネル展示「現代数学の世界」
を期間中行います。 これは, 現代数学の話題をパネルで紹介するものです。
1日目講義終了後に, 大学院生によるパネルの説明会も行います。
8月2日(月) 9:40 ― 10:00 開講式10:00 ― 11:40 講義
11:40 ― 12:10 講師との懇談タイム
昼休み
13:00 ― 14:40 講義
14:40 ― 15:10 講師との懇談タイム
15:20 ― 16:00 大学院生による展示パネルの解説
16:00 ― 数学教室案内,特別懇談会 (並行して開催)
8月3日(火) 10:00 ― 11:40 講義
11:40 ― 12:10 講師との懇談タイム
昼休み
13:00 ― 14:40 講義
14:40 ― 15:10 講師との懇談タイム
15:20 ― 15:50 修了式 (修了証授与)
別紙「受講申込書」 (コピーをとって使用しても可) に必要事項を記入の上,
封筒表面に「数学教室公開講座申し込み」と朱書し,
〒739-8526 東広島市鏡山1−3−1 広島大学理学部数学教室 公開講座係
宛に郵送してください。受付期間は
平成16年 7月1日(木) から 7月14日(水) まで
です。 数学教室の事務室 (理学部B棟7階 B709 室) まで直接持参していただく場合には,
午前9時から午後5時までの間にお願いします。
お申し込みいただいた方には, 受講票と本講座のテキストを送付いたします。
〒739-8526 東広島市鏡山1−3−1
広島大学理学部数学教室 公開講座係
電話: 082-424-7350 (数学教室事務室)
FAX : 082-424-0710
電子メール: koukai@math.sci.hiroshima-u.ac.jp