主催 | 広島大学理学部数学教室 |
共催 | 東広島市教育委員会 |
広島大学総合科学部数学教室 | |
後援 | 広島県教育委員会 |
広島市教育委員会 |
この公開講座は、大学公開事業の一つとして平成4年度に始められたもので、今回が第10回目になります。数学は諸科学の基礎として重要な役割を果たしていますが、同時に創造性と自由な発想に富み、理論的な美しさを持っています。数学に親しみ、その素晴らしさを広く共有していただくために、現在研究されている数学の基礎的な考え方の一端を分かりやすく紹介し、数学が常に生き生きと発展している様子を理解していただこうとするものです。今回も、数学の様々な研究分野から新しい題材を取り上げて、新しい講師陣によって開催されます。また、講義の他に、「数学教室案内」、ポスターセッション「現代数学への誘い」と特別懇談会「高校教育と大学教育の接点」(高校教員の方と大学教員の懇談会)を企画しています。
平成13年8月2日(木)、8月3日(金)
広島大学理学部 E102 講義室 (東広島市鏡山 1-3-1)
高校生(学年不問)及び数学に関心のある方
約100名
無料
「地球の内部を探る数学」
京都大学大学院情報学研究科・教授 磯 祐介地球物理では、地球を弾性体と呼ばれる大きなゴムの固まりのようなもの と見なして地震等の波の伝播などの研究を行います。地球物理学ではこ のモデルを採用し、人工地震の波などを地表で観測して地球の地下での断 層の切目と言った内部構造を推定しているのですが、この問題は数学的に は実は多くの未解決問題を含んでいます。今回は、この地球の内部構造を 探る問題に焦点を当て、数学の視点からの議論を試みます。
「数学で解き明かす感染症の流行と進化:麻疹からエイズまで」
広島大学大学院医学系研究科・教授 梯 正之病原体は、人間の命を奪う悪意に満ちた存在だと思っていませんか?しかし、人間の 命を奪い尽くしてしまったら、病原体も生き残ることはできません。実は、自分たち が生き残るための最小限の迷惑ですませたいと思っているかもしれないのです。とは いえ、感染症は個人の人生ばかりでなく、人類の歴史にも大きな影響を与えてきまし た。そんな感染症の本質を理解するのに、感染症の流行を表す数理モデル(一組の数 式)が役に立ちます。感染症の数理モデルは、人数の時間的変化を記述する人口論の 数式に基づいたものです。 麻疹のような感染症では、一定の人口規模以上でないと集団内での流行がとぎれてし まうことが知られています。一方、人間が自発的に行う接触によって感染が起きるエ イズのような性感染症の場合には、そのような人口規模による流行制限はありません。 これらのことは、感染症の簡単な数理モデルによっても理論的に証明することができ ます。また、性感染症の場合には、人間が作る複雑な男女関係のパターンの違いによ って流行の様相が違ってくることが予想されます。感染症の数理モデルにより、コン ピュータの力も借りながら、感染症の流行と進化にまつわる謎の解明に挑戦してみま せんか?
「小さな波の数学 −ウェーブレット解析とその応用−」
東京大学大学院数理科学研究科・教授 山田 道夫
サイン・コサインは現代の理工学の重要な基礎です。信号をいろいろな周波数の 成分に分解できるのは、サイン・ コサインがとても良い性質を持っているおかげです。し かし不便なところもあります。サイン・コサインがどこ までも続く波であることは、実は応用しようとするとき 厄介な性質にもなります。そこでこのような欠点を補お うとする数学的な道具が20年程前に開発されました。こ れはウェーブレットとよばれるもので、現在では犯罪捜 査など思いがけないところにも使われるようになりまし た。ここではこのウェーブレット(wavelet: 小さな波)の アイデアから始め、サイン・コサインとの関係、フラク タルとの相性などの数学的性質、また、風の吹き方や竜 巻の予報、人の声や地震の波の研究への応用などについ て、触れたいと思います。
「データの持つ情報を探る −多変量解析入門−」
広島大学大学院理学研究科・助教授 若木 宏文統計学とは実験や調査の結果得られるデータから有益な情報を得るための方法論で す。多変量解析というのは複数個の変数を同時に扱う統計分析手法の総称です。多変 量解析の中には、重回帰分析、分散分析、主成分分析、因子分析、判別分析、クラス ター分析、数量化一類、数量化二類数量化三類などの分析法が含まれています。
この講義では、多変量解析に含まれる、それぞれの分析方法がどのようなデータに 対してどのような目的で適応されるかを、プロ野球の打撃成績データなど、身近な例 を使って説明します。
また、それぞれの分析方法がどのような考え方をもとに導き出されたのかを説明し ます。
分析方法を導出するときに使われる数学的内容は、大学の初年度で学ぶ微分積分と 線形代数ですが、高校生の方にも理解できるように、これらの数学的な基礎知識につ いても説明する予定です。
磯 祐介氏(京都大学大学院情報学研究科・教授)応用解析学、特に微分方程式の数値解析学を専門にしています。 最近は、微分方程式の中に未知の項がある「逆問題」にも興味を持ち 研究を続けています。
梯 正之氏 (広島大学大学院医学系研究科・教授)現在、感染症の流行について数学を使って分析し、現象の理解や予防対策に役立てようとしています。もともとは、理学部で数理生態学の研究から出発しましたが、人間 の生態学ともいえる公衆衛生学と出会い、医学部で仕事をしています。
山田 道夫氏 (東京大学大学院数理科学研究科・教授)自然科学や工学における数学の応用を研究しています。 最近は気象学などの地球科学における数学的手法も研究 対象の一つです。見方を変えると思いがけないものが見 えてくるのがこの分野の魅力です。
若木 宏文氏 (広島大学大学院理学研究科・助教授)広島の生まれで、広島舟入高等学校、広島大学理学部の卒業生です。広島大学大学 院理学研究科数学専攻の確率統計講座の助教授で、専門は数理統計学、特に多変量解 析について研究しています。
第1日目の講義終了後、次の二つの企画を並行して行います。●「数学教室案内」:数学専攻の図書室、コンピュータ室等の見学会
● 特別懇談会 「高校教育と大学教育の接点」
教員の方を対象とした高校教育と大学教育の情報交換のための特別懇談会
(特別懇談会に参加ご希望の方は、申込書の参加希望調査欄に記入してください。)また、ロビーにて
● ポスターセッション 「現代数学への誘い」
を期間中行います。これは、数学の最近の話題をパネルで紹介するものです。2日目講義終了後に、大学院生による説明会も行います。
8月2日(木) 9:40 ― 10:00 開講式10:00 ― 11:40 講義
昼休み
12:30 ― 13:00 講師との談話タイム (tea break)
13:00 ― 14:40 講義
14:40 ― 15:10 講師との談話タイム (tea break)
15:20 ― 特別懇談会、数学教室案内 (並行して開催)
8月3日(金) 10:00 ― 11:40 講義
昼休み
12:30 ― 13:00 講師との談話タイム (tea break)
13:00 ― 14:40 講義
14:40 ― 15:10 講師との談話タイム (tea break)
15:20 ― 15:50 終了式
別紙受講申込書(コピーをとって使用しても可)に必要事項を記入の上、
封筒表面に「数学教室公開講座申し込み」と朱書し、
〒739-8526 東広島市鏡山1−3−1広島大学理学部数学教室公開講座係
宛に郵送してください。受付期間は
平成13年 7月2日(月) から 7月13日(金) まで
です。数学教室の事務室(理学部B棟7階B709)まで直接持参していただく場合には、
午前9時から午後5時までの間にお願いします。
お申し込みいただいた方には、受講票と本講座のテキストを送付いたします。
広島大学理学部数学教室公開講座係
電話:0824-24-7350(数学教室事務室)
電子メール:koukai@math.sci.hiroshima-u.ac.jp