主催 | 広島大学理学部数学教室 |
共催 | 東広島市教育委員会 |
広島大学総合科学部数学教室 | |
後援 | 広島県教育委員会 |
広島市教育委員会 |
この公開講座は、大学公開事業の一つとして平成4年度に始められたもので、今回が第9回目になります。数学は諸科学の基礎として重要な役割を果たしていますが、同時に創造性と自由な発想に富み、理論的な美しさを持っています。数学に親しみ、その素晴らしさを広く共有していただくために、現在研究されている数学の基礎的な考え方の一端を分かりやすく紹介し、数学が常に生き生きと発展している様子を理解していただこうとするものです。今回も、数学の様々な研究分野から新しい題材を取り上げて、新しい講師陣によって開催されます。また、講義の他に、「コンピューター見学ツアー」、「数学図書室案内」、「コンピューターのデモンストレーション」と特別懇談会「高校教育と大学教育の接点」(高校教員の方と大学教員の懇談会)を企画しています。
平成12年8月1日(火)、8月2日(水)
広島大学理学部 E002 講義室 (東広島市鏡山 1-3-1)
高校生(学年不問)及び数学に関心のある方
約100名
無料
「インターネットを支える暗号技術」 日本アイ・ビー・エム 渡辺 芳明インターネットを使用したオンライン・ショッピングでクレジット・カードの番号を送る等、重要な情報をインターネット経由で送付する事が多くなってきています。セキュリティ的に不安があると言われているインターネットを使用して、このような情報を送る事が可能になったのは、高度な暗号処理技術がインターネットの世界で簡単に使用可能になったためです。パソコンに組み込まれているインターネット・エクスプローラや、ネットスケープ・ナビゲータにも、これらの暗号処理技術が組み込まれています。数学的に見ると、この暗号処理技術は、整数論の一つの応用となっています。
この講義では、インターネットで使用されている暗号処理技術を解りやすく解説すると共に、これらの暗号処理技術を用いた場合、どの程度安全にインターネットを使用できるのかを検討します。「力学系とフラクタル」 広島大学理学研究科 宍倉 光広
この講座では数学の立場から見た力学系の理論と,そこに現れるフラクタルについて解説します.力学系とは,自然科学の諸分野でよく現れる時間発展を記述する数学的モデルです.1970年代以降の数多くの研究で明らかになってきたのは,非常に簡単な原理や規則に基づいた力学系でも,非常に複雑な現象(特にカオスなど)を引き起こすことがあり得るということです.それまでは漠然と複雑な現象は複雑な系があって初めて起こりうると考えられていたので,これは驚くべき発見でした.講座では,非常に簡単で具体的な系,3体問題,ロジスティック写像,複素力学系について,それらが引き起こす複雑な現象をコンピュータの実験を織りまぜながら紹介する予定です.また,これらの力学系の振る舞いに応じて,相空間やパラメータ空間には「フラクタル」と呼ばれる複雑だけれどおもしろい図形(集合)が現れます.フラクタルに対して定義される非整数の次元の概念などについても解説する予定です.「アミダくじと組み紐群」 三重大学教育学部 蟹江 幸博
対称群は初めて「群」が歴史に現れたときからの主人公の一人です.方程式が四則演算とベキ乗根を取ることで解けるかどうかを判定するための道具としてラグランジェ・ガロアが考え出したものです.それ以降,群の理論は抽象的な数学理論としても発展して来ましたが,色々な現象の解析のための道具として,広い範囲に応用されて来ました.行列の理論,組合わせ理論,表現論など数学の諸分野で基本的な言葉としての役割を果たし,さらには物理学,特に素粒子物理学などでも重要な役割を果たしています.
その代表選手が対称群です.ですから色々な人が詳しく調べています.ところでアミダくじというものがありますね.1つ1つの横線は隣との交換をするだけです.それで,すべての組合わせが本当に得られるのでしょうか?それを少し数学的な言葉づかいで確かめてみます.一言で言うなら,アミダくじで定まる群が対称群と同じであるということです.いろんなアミダくじを書いてみて,示していきます.同じ種類のことを,組み紐の作る群でもやってみるつもりです.
「カオス」 広島大学理学研究科 太田 隆夫御存じのように天体の運動はある決まった法則に従っており、たとえば、将来日食がいつどこで起こるかを私達は正確に予言することができる。もっと簡単な例では、ある物体が速度100m/秒で直進しているとき、1分後にどこにいるかは小学校で習う算数の問題である。
しかしながら、さいころ投げのように予言できない動きもたくさんあることを私達は経験的に知っている。一意的に決まる法則によって運動しているにもかかわらず、予言不可能になる現象をカオスという。
公開講座ではカオスの例を示し、それを表現し理解するためのいくつかの試みを平易な言葉で解説する。
第1日目の講義終了後、次の二つの企画を行います。「コンピューター見学ツアー」:数学専攻の計算機室の見学会
「数学図書室案内」:数学専攻の図書室の見学会
また2日目の講義終了後、次の二つの企画を並行して行います。
「コンピューターのデモンストレーション」:数学専攻のコンピューターを使用したデモンストレーション
特別懇談会「高校教育と大学教育の接点」:教員の方を対象とした高校教育と大学教育の情報交換のための特別懇談会
(特別懇談会に参加ご希望の方は、申込書の参加希望調査欄に記入してください。)
8月1日(火) 9:40 ― 10:00 開講式10:00 ― 11:45 講義 (講師:渡辺芳明)
昼休み
13:15 ― 15:00 講義 (講師:宍倉光広)
15:20 ― コンピューター見学ツアー、数学図書室案内
8月2日(水) 10:00 ― 11:45 講義(講師:蟹江幸博)
昼休み
13:15 ― 15:00 講義(講師:太田隆夫)
15:10 ― 15:40 終了式
16:00 ― 特別懇談会、計算機デモンストレーション
筒表面に「数学教室公開講座申し込み」と朱書し、
□ 別紙受講申込書(コピーをとって使用しても可)
を同封の上、〒739-8526 東広島市鏡山1−3−1広島大学理学部数学教室公開講座係
宛に郵送してください。受付期間は
平成12年 7月3日(月) から 7月14日(金) まで
とします。数学教室の事務室まで直接持参していただく場合には、午前9時から午後5時までの間にお願いします。お申し込みいただいた方には、受講票と本講座のテキストを送付いたします。
広島大学理学部数学教室公開講座係
電話:0824-24-7350(数学教室事務室)
電子メール:koukai@math.sci.hiroshima-u.ac.jp